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2006.09.20

「エクスペリメント」

「Experiment」(=実験)というタイトルの映画をDVDで見ました。amazonのHPなどの宣伝文句を見ると、

(引用開始)
 極限状態に陥った人間の狂気を描いた究極のサイコホラー。犯罪者の攻撃性を消滅させる政府極秘プロジェクトによって人格矯正を施された少年たち。しかし次第にサディスティックになっていく看守たちの振る舞いに、彼らはその残虐性を増していき…。
(引用終わり)

 なんて、すごいことが書いてあるのですが、同じような「心理実験」だの「囚人と看守」だのが出てくる「es」という映画と比べるとはるかに・・・

 そうはるかに、なんというか、いい映画、でした。もっとエグい話かと思っていた私(←こらこら)は良い意味で期待を裏切られました。

 「es」はまさに、人間が「攻撃性」という狂気に捕らわれていく様が如実に描かれた映画で、見ていて救いようのない作品でした。人ってそういう状況に置かれるとそうなっちゃうのね・・・という。まあ、「es」の場合は、そのまんま「人間というものはそういう生き物である」ということを証明するための実験が舞台となっているので、結論も経緯も当然といえば当然の帰結なんですけど、それでも「人間てここまでするのか」と。
 そして、それが事実であるところが、怖い、わけですが。

 「エクスペリメント」は似ているようで、まったく違う映画です。
 登場するのは実際の犯罪者と看守。(「es」の場合は実験のため集められた一般人)
 実験とはいっても、これは、ほとんど実用化されているケースですね・・・

 内容については、ネタバレになるので詳しくは書きませんが、私は映画の最後で「犯罪者の更生」というのはこういうことなんだなーとちょっと感じ入ってしまいました。

 たとえば、世の中に理不尽なことがあって。どう考えても自分が正しくて、相手が理不尽な圧力を自分に加えてくる。自分だけならともかく自分の周りの大切な家族にも。家族を守るために暴力を振るう。犯罪も厭わない。・・・私は主人公にすっかり感情移入してこの映画を見ていたものですから、たとえばそんなふうにどうしようもない理不尽な状態に自分が置かれた時には、暴力をもってそれを正そうとする以外、仕方ないじゃないの、と映画を見ている間、考えていました。
 
 でも、そうじゃない。
 そうじゃないんですよ。
 
 世の中には理不尽なことが本当にたくさんある。話し合いが通じない相手もいる。
 そして正義というのは、人の数だけありますから、力で自分の正義を貫こうとすれば、人は最後の一人になるまで戦い続け、殺し合わなければならなくなります。
 けれど、そう言うときに力ではない、もっと別なやり方で自分を守る方法を見つけること。そのためにどうすればいいかを学び、力に対して力ではない別の何かで対すること。
 力を持って自分の理不尽を訴えることが犯罪ならば、「それならどうすればいいか」を学ぶことが真の更生なのだなぁと、ちょっと驚いてしまいました。
 いえ・・・その。かなりこう書いてしまうとネタバレなんですけどね^^;
 
 たとえば、北朝鮮のように、話し合いで解決しようとしても、テポドンを撃ってくるような相手も世界にはいるわけですが。だからといって日本も核武装してもしょうがないわけで。
 この小さな地球で、違う民族同士がお互いに共存しあうためには、ルールとそれを守ることが大切だし、それを破ってくる相手にも、力で対抗しようとすれば人類は自滅するのみじゃないのかな・・・

 自分が甘いことを言ってるのも解ってはいるのですが。力が全てではない。そしてルールとは何か。私にとっては、そんなことを考えさせられる作品だったのです。

 いえ「エクスペリメント」の実験が正しいとは思いません。いくつも問題がある危険極まりないやり方だと思います。けれど「更生」とは何なのか。それをちゃんと考えたことのある人間が世の中にはどれくらいいるだろう?
この映画は、その問いに対しての、答えの一つを提示しているのだと思います。

 かなりネタバレしちゃいましたが・・・「エクスペリメント」、機会がありましたら見てみて下さい。

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