「バテンカイトス」というとあるゲームの登場人物に「リュード」という名前の青年がいます。
ヒーローでもヒロインでもなく、いわゆる、いっしょに旅をするパーティの一員。
簡単に書くと 「帝国」という私利私欲だけに走る皇帝に支配された国があって、彼はその国の軍人でエリート階級の出なのですが、帝国に反抗的なある村の掃討作戦に反対したことで、地方に左遷されてしまいます。
そして、彼は、結果として、左遷先で出会った主人公を始めとする仲間達とともに、自分の国を敵にまわして、戦うこととなっていくのですが。
私は、最初の頃から、このリュードという青年が好きでした。
このゲームを私に勧めてくれた友人曰く、「リュード」はこのゲームの中ではあまり強くなくて、それなのにセリフは強気で、このゲームのファンの間では「ヘタレキャラ」として名を馳せているとか(笑)。
そもそも、ゲームのストーリーの中でも、敵国の人間なので、主人公からは最初、スパイなんじゃないかと疑われ、後半では自分の国を滅ぼした裏切り者と言われます。本人も、そうして疑われ続けることを気にしてますし、要は態度のはっきりしないところがあるが故に「ヘタレ」に見えちゃうみたいです。
でも私は、勧善懲悪のストーリーにあるような「正義の味方」なんてうそくさいと思うし、まあ理屈はともかく、リュードの強気なセリフがなかなか気に入っていました。
そしてゲームの進行は終盤に入り。いよいよ最終決戦がせまってきました。
リュードのストーリーもそろそろ締めです。
リュードの故郷である「帝国」はいろいろありまして、皇帝が死に、崩壊してしまいました。大勢の人間が犠牲になり、リュードの場合は身内の人間も亡くなってしまいます。
自分は正義と信じて戦ってきたけど、けして自分の国を滅ぼしたいわけじゃないかった・・・
リュードは悩み、その「心の闇」につけ込まれ、そういう心の闇に巣喰う怪物に、闇の世界に引きずり込まれて戦うことになります。
まあよくある話です。「ゲド戦記」や「指輪物語」の昔から、自分の中の闇と戦う話は、ファンタジーの王道。
でも、、私はこのエピソードで確信しました。やっぱり私はリュードが好きだー♪
なんというか・・・やっぱりこの世界には絶対的な正義も悪もないからなぁ。誰も君が正しいんだ、なんて言ってくれないんですよね。誰もが自分が信じる正義のために戦うしかない。
帝国のエリート階級で、優秀な兄と姉の元で育ち、左遷なんかされたものだから一族の汚点として憎まれていた彼。左遷されてもそれなりにその土地を好きになってがんばっていたけれど、帝国の人間だからってあまりよく思われておりませんでした。
どこへいっても自分の居場所がないようで。両方から疎まれて。
仲間といっしょに戦うようになってからだって、何かというとすぐ疑われるし。
もちろん、疑われたって何したって、気にしない、というのは一つのやり方です。仲間の中には、リュードと同じように元は同じように帝国側としてもっとえげつないひどいことをしたけど、今は同じ目的のためにいっしょに戦ってる仲間もいて。
リュードが悩んだり迷ったりするのはおそらく、自分自身が、自分の正義を信じることができないからなのです。
・・・ふふ、でも、それが人間というもの。自分でさえ自分を信じることができないことは本当によくあることで。つまり彼は一番、「私」に近いのかもしれません。
誰も自分のことを愛してくれないのなんてもうとっくに知っている。
あきらめずにがんばってみたけど、認められなかったことだってあるでしょう。
それでも・・・そう、それでも。
何のためって、自分の正義のために戦わなきゃね。
心理学の用語に「投影」という言葉があります。
http://www.counselingservice.jp/lecture/lec14.html
リュードががんばって、仲間といっしょに戦ったり、悩みを乗り越えたりする姿を見て、私が、「いいな」と感じるのは、まさにそれなのかもしれませんわ。
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