poem(56)
「南風」
南からの風が吹いている
私は風に向かって立っている
足下はどこまでも続く砂
目や耳に時折砂粒が入るようだ
口が乾いてくる
目を開けていられない
それでも南風に向かって立っている
進みはしない
後戻りもしない
ただここにいることをきみに示すために
何もない砂の中にただ立ち続ける
きみは私を忘れないだろう
でも砂の中に立つ私を
振り返りはしないだろう
望みさえすれば自分の足で歩き出すことができるものを
立ちすくませるのはすでに思い出でさえない
夜
凍てついた空にオリオンが光る
月のない星空の下
彼方に沈むのは海か
海まで歩め
歩くことを忘れる前に
« 女性の価値とセクハラ | Main | 和漢箋その後 »
Comments