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2007.04.21

poem(57)

    「喪失」

 人に問われれば「悲しくはない」というだろう
 ただ彼は微笑むだけだった

 「喪失」は嘆いても意味がない
 泣いて戻るものならば誰だってそうする
 戻らないのが分かるから
 笑うしかなかった

 私は彼に何を与えたかったのか
 失ったものの代わりになどなれないのは
 最初から分かっていた

 ただ・・・
 人は生きる
 時が経つことがただ苦しみでしかなくても
 その重荷をわずかでも分かち合うことが叶えば

 人に問われても彼はただ微笑むだけだった
 その重荷を一人で背負ったまま去った

 残されるのは
 一人また「喪失」を背負う者

 ・・・そのように
 喪失の連鎖は時を超える
 人の命を越え遙か未来までも

 鎖を断ち切ろうと伝えずに逝くものが
 また新たな喪失を生む

 この連鎖を断つ唯一の方法は
 その重荷を分かち合うこと
 それが叶えば
 人と人の間でそれは薄れ消えていくのに

 『誰にも理解されない』と
 喪失の痛みを背負う
 愚かなる己よ
 一人嗤え

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