poem(57)
「喪失」
人に問われれば「悲しくはない」というだろう
ただ彼は微笑むだけだった
「喪失」は嘆いても意味がない
泣いて戻るものならば誰だってそうする
戻らないのが分かるから
笑うしかなかった
私は彼に何を与えたかったのか
失ったものの代わりになどなれないのは
最初から分かっていた
ただ・・・
人は生きる
時が経つことがただ苦しみでしかなくても
その重荷をわずかでも分かち合うことが叶えば
人に問われても彼はただ微笑むだけだった
その重荷を一人で背負ったまま去った
残されるのは
一人また「喪失」を背負う者
・・・そのように
喪失の連鎖は時を超える
人の命を越え遙か未来までも
鎖を断ち切ろうと伝えずに逝くものが
また新たな喪失を生む
この連鎖を断つ唯一の方法は
その重荷を分かち合うこと
それが叶えば
人と人の間でそれは薄れ消えていくのに
『誰にも理解されない』と
喪失の痛みを背負う
愚かなる己よ
一人嗤え
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