『管理体制』批判はもう古い!?
またまた「地球(テラ)へ…」に関する話題から。
最近インターネットラジオで、この「地球へ…」の脚本等を担当されている方の話を聞く機会がありました。その話の中でその方はこういったことをおっしゃっておられました。
『管理体制』批判はもう古い
・・・ふむ。原作のコミックである竹宮恵子の「地球へ…」は、行き過ぎた管理社会の未来を舞台にしており、SFの中で、こうした管理社会に対する批判が描かれるのは、確かにこのコミックが書かれた当時のSFのブームでありました。
それがもう「古い」のだとすれば・・・今はどんな社会なのでしょう?
「管理社会」というのは、要は全ての人間が平等で均一な社会です。富めるものもいなければ貧しいものもいない。全ての人間が等しく幸福になれる・・・いわゆる「社会主義」なんてのも、ここから生まれました。
一見、良さそうに見えるんですが、なぜかそうした社会は崩壊する。SFなんかでは、人間の自由を束縛する敵として描かれます。
みんなが平等で均一であれば、余剰の富が、その社会をコントロールする極少数の人間に集中するからかもしれません。
または、みんなが平等で均一ならば、怠けることは許されず、娯楽は衰退するし、がんばって自分だけ成功して金持ちになろうとする意欲も薄れる。結果、競争社会についていけず、皆が貧しくなる。
で、「社会主義」は失敗だった、というのが世の中の定説となった後に、今の社会があるわけですな。
うーん・・・なかなかどっちがいいとは言いにくいんですけどねぇ・・・
「自由」を標榜する私としては、やはり管理社会はよくないよなぁとは思うのですが、じゃあ、今の世の中がどうなっているかと言えば、簡単に言うと「弱者切り捨て」の世の中になってきてしまっています。
能力の低い人間は貧しく、能力の高い人間は富む。
税制もここ、何十年かでだいぶ変わってきており、消費税が導入され、貧しかろうが富んでいようが、生きている限り負担は同じになったわけです。病院にかかるのも自己負担が増え、老人への給付金は廃止され、つまりは、「みんなが等しく幸せになる」という思想はなくなって、貧乏が嫌なら自分で稼げ、と。極端な話、人を騙し、隣を蹴落としてもです。モラルも低下するよなぁ、そりゃ。
そして、うまくやった人間と、うまくやれない人間の差が格差となって現れ、片方に子供の給食費もほんとに払えず四苦八苦する親がいると思えば、一戸建てに暮らし車を何台も持っても「給食費なんて払わないで済むなら払わない」と居直る親もいる。
役所の方は、誰の年金をいくら預かっているかも分からなくなっているようですし、完全に「管理」の崩壊です。誰ももう社会保険庁に頼らず、自分でなんとかしようと考えるでしょう。なんとかできない人は・・・落ちていくしかない。
漠然とした考えですが、おそらく、どっちがどっちということではなく、両者は天秤の上に乗っているような気がします。
どっちに偏っても社会は崩壊する。完全な管理体制では人間の個々の意欲を殺ぐし、かといって自由意志に任せれば、うまくやった人間だけが得をする世の中になる。
今がどっちに偏っているかといえば、言わずもがな、後者というわけで。
と、すれば、もしも、今の時代に、SFに限らず、何かのフィクションを作り、社会に警鐘を鳴らすのだとすれば・・・やっぱり「ライアーゲーム」みたいな作品になるんでしょうね。
「本当に『うまくやる』だけでいいのか?」と。
うむ、そう考えると「地球へ…」が描いているストーリーは、確かに、それが即、今の時代を反映するものではないのかもしれません。
でもなぁ。
時代に関係なく、「地球へ…」みたいな作品も、私は必要だと思うけどな。
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Comments
BUBIさんのおっしゃる通り、この二つの体制は天秤でしょうね。世の中全てForceの導くままに、常にバランスの上に成り立っているのです。。by Yoda。。
私的には「地球へ」の結末をどう読むかによって、また違うものになるかと。
つまり、管理体制の側にキースを置いた以上、必ずしも管理体制批判とも言えないし、行き過ぎたトォニィは自由への警告ともとれる。また、、、って、ネタバレありなんやろか(^^;
とまぁ、色んなことを考えさせられる、「地球へ」はそれだけ素晴らしい作品ってことで(^^;
Posted by: chiharu | 2007.06.12 18:42
私は「天秤」のたとえは、いつも「ロードス島戦記」を思い出します。その物語では、強い力を持つ魔女が天秤の均衡を保つためにわざと戦争を起こします・・・
たかだか長くても80年くらいしか私たちはこの世にいることができないのですが、その80年に天秤がどっちに傾いているかで、人間の一生が大きく左右されてしまうことを考えると、なんだか不思議な感じがします。何がいいのか・・・分からないなりに、その時々にベストと思われる選択をするしかできないのですけども、本当は、一部の人だけが突出するんじゃなく、みんながそこそこ幸せになれる世の中がいいんだけどな~
Posted by: BUBI | 2007.06.14 14:08