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2007.10.30

「美味しんぼ」と価格介入の話

「美味しんぼ」というマンガがビックコミックスピリッツで連載されております。ドラマにもなったし、長く連載しているお話ですから知ってる方も多いでしょう。
 今週のビックコミックスピリッツの「美味しんぼ」では、食品添加物の話がでていました。

 たとえば、「無果汁」のジュース、厳密に言えばジュースではなく「ドリンク」と言わないといけませんが、あのジュースの味は全部、食品添加物の味だという話がマンガになっておりました。あとはカップラーメンのとんこつスープの味も。

 ・・・まあね。当たり前と言えば当たり前の話です。「無果汁」なんですから、何で味を作ってるかといえば添加物に決まってます。その添加物が一体何で出来ているかといえば、カイコの糞やカイガラムシからとった色素を使ってたりするわけで。それでも、天然のものを使ってるんだから、別に毒ではないといえばそのとおり。

 たとえばプリンにしょうゆをかけると「うに」の味になるのと同様で、結局、それは「うに」ではないけれど、プリンとしょうゆなんだから毒ではない。うにの味がすればそれでいい。

 「美味しんぼ」では、それをまがいものであると言い、「それでいい」なんていって、安いからって喜んで買う消費者を断罪します。

 マンガの冒頭では、たくあんの話がありました。
 無香料、無着色で昔ながらの製法で、国産大根にこだわって作ったたくあんは売れない。綺麗に黄色に色を付け、匂いも消して、つやつや光ったたくあんがよく売れる。材料の大根が中国産であろうと、どこ産であろうと、関係なく。なんたって、中国産の大根であれば安いですし。

 「美味しんぼ」では、たとえばとんこつラーメンだって、どうやって作ってるかを考えればそんなに安くできるわけはなく、なのに、安いからいい、と言われる風潮を嘆くわけですが・・・

 この「安いから」というのは深く考えると難しい問題です。

 たとえば・・・最近よく言われる、牛乳は体によくないという話。牛をちゃんと飼っていい牛乳を生産しようとすれば、それなりにコストがかかる。けど、現状、牛乳は水より安い価格で売られております。酪農家はその売買価格に見合うように牛乳を作ろうとすれば、牛を飼うコストをぎりぎりまで下げなければやっていけません。飼料も牛を飼う方法もね。それがいいのか、悪いのかと言う問題。

 要は、安さを追求するあまりに、いいものを作れなくなっている現状があって。
 
 ・・・でもなぁ・・・私の中の庶民は思います。
 
 それでも、やっぱり、一人暮らしだけど、一応私も家計を預かる身ですので、その立場で考えると、やっぱり1リットル200円の牛乳よりも156円の牛乳を買っちゃうわけですよ。無果汁のジュースは飲まなければすみますがね。たくあんはそもそも、買わないし。

 洋服だって、タカシマヤのブティックの何万もするこだわりスーツじゃなくて、イトーヨーカドーの中国製品を買ってしまう。しょうがないんだよな、これは。

 ずっと以前から、私などは、がんばっている日本産業を応援したいと心から願っていますが、結局のところ、われわれ消費者は「安くていいもの」が欲しいので、なかなか生産者側が本当に作りたいものを買ってあげられないわけです。

 そうなると、生産者は「質は多少落としても安いものを大量に売る」しか利益を出す方法がなくなってしまう。
 その結果、我々の生活の質はどんどん落ちていく。

 うーん、これって悪循環だよなぁ。

 そう考えていくと・・・ある程度の「質」を維持するためには。
 ある程度の価格介入は仕方ないのかしら。

 あるモノがあまりにも安く売られている時に、安いからいいわけではないことを、もっと何らかの方法で、誰かが訴えていかなければ、市場原理の中で、質を維持していくことが難しくなってしまう。

 要はどんな手を使っても「安く売った方が勝ち」になってしまっては、特に食品のように口に入るものの質の低下は、経済の原理では片づかない話で。もし、食品添加物という技術でめちゃくちゃ安い食べ物ができて、世に広まって、みんながそれを食べるようになったときに、もしその添加物が人間の体を壊すものであったとき、誰が責任をとれるのか、ということです。

 個人の問題、でいいのだろうか。こういうことって。

 でも「価格介入」だなんてみんな反対するだろうなぁ。モノの値下げを防ぎ、生産者を保護する話だもんなぁ。

 どう思いますか、これ。

 いや、私、最初に今週の「美味しんぼ」を読んだときに、ホンモノにこだわる「美味しんぼ」の登場人物達に対し、
「いつもグルメな生活を送ってる人に、我々庶民の気持ちが分かるかー」
 と思ってこの記事を書き始めたのですが、書いていく内に、それが、結局、庶民自身の首を絞めている話になってきちゃって。
 生産者がいいものを作ることにプライドを持たなくなったら、結局、消費者の生活も落ちていく。この悪循環はやっぱよくないなぁと思うのです・・・

 どうでしょう? 難しい話で恐縮ですが、もし読んで思うことがあれば意見を聞かせてください。

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Comments

難しい問題ですが、こと食に関しては「美味しんぼ」と同じスタンスです。
もちろん、一般庶民なので、何が何でも!ってのは無理です。生きていけませんから。。
椎茸だって中国産を買っちゃうし(^^;

自分のブログでも何回か書いたのですが、例えばシシャモは今は庶民の口に入りません。カペリンと言う魚がシシャモと名付けられて売られています。別に「カペリン」と書いて売れば良いのにそうしないわけです。
回転寿しなんかでイクラが回ってます。常識的にその値段であの量のイクラが食べれるのでしょうか?
どうどうと「人造イクラ」と表記すれば良いのです。
ドイツでは純粋令があるので、麦芽と水とホップ以外の原料を使ったものをビールと表示できません。諸外国、特にヨーロッパではオーガニックに関する表記も日本とは比較にならぬほど難しい(と美味しんぼに書いてありました:笑)らしいです。

先にも書きましたが、私は別に偽物は偽物で構わないと思ってます。生活水準を背伸びすれば、それは仕方の無いことです。冬に西瓜を食べたければそれなりの代償が必要なわけですから。
ただ、それを偽物として受け入れなければならないと思ってます。偽物と(言葉が悪いですが、”その名称のものではない”と読み替えて下さい。決して粗悪なものばかりじゃないですから)理解して、口に運んで欲しいと思います。
そうでないと、それは食事ではなく、餌でしか無くなってしまいますから。

私は未来の日本人に「鮭と鱒は同じ種の魚。でも区別してた」って時代を知って欲しいと思っています。

すいません、ちょっと熱くなりすぎました。ごめんなさい〜(T_T)

Posted by: | 2007.10.30 22:05

農産物については、価格介入というか、農家に補助はするべきと私は思っています。
現にヨーロッパではしていると聞いています。
日本は自給率の低い国ですから、最低限の食の確保は国がすべきだと思います。
米さえも自由競争させるなんて、この国どうなってしまうのかなあと思います。
(これは価格介入とは違うのかな?でも食の安全を守ると言う点では、同じだと思うし。)

消費者が利口になれと言うけど、無理がある。複雑なしくみを勉強して知識をつけることなんて出来ないですよ。書いてある事をそのまま鵜呑みにするしかない。いくら美味しんぼを読んで、あ、そうかあなんて思っても、実際、その安全で美味しい食べ物がどこにあるかわからないもの。今晩の夕食と思えば、スーパー行って、せめて「国産」にこだわるぐらいで、国産の質まで考えられない。今は、国産の方が危ういんじゃない?という社会状況なのに。

価格介入と言う事は、最低価格を設定して、質を守ると言う事でしょう?
これこれのものを作るのは、これだけのコストは最低必要なんだ!ということは知りたいし、必要だと思う。
それは全ての業界にいえますよね。
建設業界だって、最低価格がないから、どんどんコストを下げられ、終いには構造偽造なんて起きて、壊れる家を買わされた人がいるわけで。

資本主義社会の歪みが出てきているのかなと思います。そろそろ違う社会が生まれてもいいのかもしれないですよね。

Posted by: ぐーたん | 2007.10.31 09:19

「ち」さん、ぐーたんさん、コメントありがとうございます。とても参考になりました!

 まずは「ち」さんへレス。
「ち」さんのスタンスは、「偽物は偽物で構わない。しかしそれをホンモノと同じ名前を付けて得ることが問題」ということですな。ふむふむ。これはそのとおりですね。

 ズルをする業者は問題外として、一応そこは国がなんとかできる範囲ですから、商品の名称や表示の規制は「公」がけっこうがんばってくれているようです。だからこそ無果汁のジュースと聞いて、ああ、あれか、と私などもすぐ分かるわけで^^
 日本もこの点はもっとヨーロッパ並にがんばれるようになるといいのだけど。

 熱く語られるのはまったく問題ないですよ~。私の方が熱いですからね。

 そして、この先がぐーたんさんへのレス。

>消費者が利口になれと言うけど、無理がある。

 そうなんですよね。私は記事中に、

「もし、食品添加物という技術でめちゃくちゃ安い食べ物ができて、世に広まって、みんながそれを食べるようになったときに、もしその添加物が人間の体を壊すものであったとき、誰が責任をとれるのか」

 と書きましたが「もし」も何も、今やまさにその時代でして。

 目の前に安い食べ物があり、それが粗悪だと分かっていてもいなくても、それを食べてしまう消費者がいる。それは自己責任でいいのだろうか。
 よい製品を作りたい生産者がいたとしても、それがコストがかかるが故に安い商品が売れてしまえば、誰もよいものを作らなくなる。それでいいのかしらん。

 ぐーたんさんのコメントを読んで、なぜ日本の農業者が国に手厚く守られているのかがよく理解できました。
 票田だとか何だとかよりも、こんなに大切なことのためだったのか・・・なのに、そのことを知っている人ってすごく少ない気がする。私でさえ知らなかったもの。
 
 なんというか、ここのところずっと規制緩和できている世の中にあって。そうすれば何でも「安く」できて、それが善みたいに言われていますけど、そうじゃない一面もある。そのことをしっかり説明できて、国民の生活を守ることのできる「政治家」がなんでいないのかなぁ。
 いや、いなくはないのか。
 私が知らないだけと思いたい^^;

 こう考えてくると今週の「美味しんぼ」はけっこういいことを書いてるんですね。
 単なる偽物批判でもグルメ奨励でもなく、ホンモノの食とは何か、それがなぜ必要なのか・・・ってことだよな~

 お二人ともほんと、コメントありがとうございます~
  

Posted by: BUBI | 2007.10.31 17:42

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