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2007.12.22

「色彩の息子」

山田詠美の「色彩の息子」という短編集を持っています。
 かなり前に図書館で単行本を借りたのですが、強く印象に残っていたので、古本屋で文庫本を漁っていたときに、思わず買ってしまいました。

 この中に「病室の皮」という短編があります。

(引用開始)

 善良な人間と呼ばれることは生きていくのを楽にする。そのことに気付いて以来、私は良い人になった。

(引用終わり)

 こう語る「私」が「良い人」になる前にどんな女だったかというと、自分は本当は選ばれた人間で「外から見ればなんのへんてつもない女」のくせに、「自分が自分であることに優越感を抱きたくて膿をためながら、何かを待ち続けていた女」であった、とこの小説には書かれております。

 こういうのを読むと・・・例によってこう思います。
 これ、私のことかいな^^;;;;;(核爆)

 まあ、この小説の主人公は女性ですが、男性でもこういった自意識を持つ人は多いでしょうな。

 私も、いわゆる「良い人」です。
 でも本当は自分が良い人ではないことを知っております。

 この小説では、本当に善良な女性が一人と、本当はそうでないけど善良なふりをする人が男性と女性一人ずつでてきまして、この3人はいわゆる三角関係にあります。

 善良なふりをする女性、それが「私」というこの1人称の小説の主人公なのですが、同じく善良なふりをする男性は、本当に善良な女性の恋人で。

 「私」もまたこの男性に恋をし、友人である「本当に善良な女性」から彼を奪ってしまいたくてたまらなくなるのですが・・・良い人である彼女は、それができずに心の内に押さえきれない思いをふつふつとためているわけです。

 破局はある日いきなりやってくる。

 男性から「私」はこういわれます。「きみも(自分と)同じ種類の人間」だと。自分の正体を見抜かれた、この小説の「私」は衝撃を受け、男性は彼女の前から黙って立ち去ります。
 
・・・という短いお話なのですが。

 うーむ、まあ確かに私はこの小説の主人公と同じような人間で・・・
 小説では良い人のふりをすることを「偽善」と呼ぶんですけど、私はその「偽善」という響きがちょっと気に入りません(苦笑) 逆に言ってしまいます。「偽善」の何が悪い!

それこそ小説ではないのですから、この世界に完全に「善良」な人間などいないと私は思います。もしいるとしたら、それはその人間が普通よりずっと恵まれているからで、少なくとも、私が生きている周りにはいないなぁ。

 他者に対して善良でいようとすることは、それは社会生活のマナーだと私は考えています。

 そりゃ嫉妬もするし、欲もある。お昼のランチでお店に入って、注文したのはこっちが先なのに、隣のテーブルの人のオーダーの方が先に出てくれば「ちっ」と思いますよー(せこい)。

 でも、そういったいろんな自分の不遇について、怒っていてもきりがないです^^;
 怒らないことが「生きていくのを楽にする」技なのかもしれません。

 本当に善良な人は、そういうときに本当に怒らない。
 でも私と同じ種類の人間は、内心むかついているわけですが、それをぐっとこらえて、怒っていないふりをするわけです。
 偽善といえば偽善だけどなぁ。私はそれを悪いと思ったことはありません。

 この小説では、「人は善良なものに惹かれるが、偽善者は本当の善良な人間には結局勝てず、最後は自分で自分に復讐される」というようなメッセージが読み取れるわけですが・・・

 まあ、正面から勝負をして、本当に善良な人に勝てないのは本当でしょう。
 でも別に、だまして善良な人に勝とうとも思いません。
 人生は勝ち負けではなく。おそらく偽善者には偽善者なりの幸福な一生があるのであろうと、思います。
 
 私だったらこの小説、こんな結末にはしないなぁ。偽善者の女と、その女が自分の同類だと見抜いた男。その二人の物語の方が、真に善良な女と自分の偽善を知り尽くしているが故にその女に惹かれる男の物語よりもずっと面白いと思うのにな。
 まあ、小説だったらそうですが、現実には、男が自分と同類の偽善者を選んだりはしないのは当たり前か^^
 
 ただ、生きていくのを楽にするために、いい人、優しい人のふりをすることは大事なことだと私は思います。本当はそうじゃないからって、自分に正直に生きることも大事だと言われることもありますが、並みたいていの覚悟で自分に正直に生きることはできません。
 自分に正直に生きた人間は、偉業を成し遂げる立派な成功者になるか、悪人になるかのどちらかでしょう。

 おそらく、この世の中の人のほとんどはそんなふうには生きられず、どこかで自分を偽って生きていて。その一人である私は「そういう生き方もそれはそれでありなんじゃない?」と強く思うわけです^^

 まあ、山田詠美さんの小説はエンターテイメントです。真面目に考えずとも、面白く読めばそれでいいのでしょう。興味をもたれたら、ぜひご一読を。この他の短編もみんな、とても面白いですよ。

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Comments

 山田詠美は読んだことがありませんが、こういうのを書いているんですね。
 
 自分に正直に生きるのは並大抵の覚悟ではできない、ということに強く同感しました。今僕は、ある覚悟をもって自分に正直に生きているつもりですが、徹底できてはいません。どこかで怒りを爆発させたり、妥協したりは避けられませんから。
 
 孔子は「七十にして、心の欲するままに従いて則を越えず」と言った、と「論語」にありますが、聖人以外には死ぬまで到達し得ない状態です。仏教は、人間とはそういうものだ、という前提に立って心の平安を目指す教えだと、僕は理解しています。

Posted by: 春海 | 2007.12.22 at 18:16

こちらにもいらっしゃい、春海さん。

孔子のこの一連のフレーズは私も好きで、よく心の中で復唱しますわ。

三十にして立つ。
四十にして惑はず。
五十にして天命を知る。

来年になったらいろんなことに迷わないようになれるかな・・・(おっと)

Posted by: BUBI | 2007.12.23 at 18:30

 おっとっと・・・聞かなかったことにしておきますね^^

Posted by: 春海 | 2007.12.24 at 15:28

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