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2008.10.10

セカイ系

「北野・宮崎・押井作品、ベネチア映画祭で受賞ならず」

というニュース解説を読んでいましたら、「セカイ系」という言葉が出てきました。

「セカイ系」という専ら萌え系アニメの王道パターンがあるらしく。
私がざっと把握したところでは

○物語は、少女と男の子の間で展開される。
○世界の破滅の鍵を少女が握っている。

という感じの話のようです。

リンク先の記事では、『大きな物語の喪失から端を発する、「ぼくときみ」と「外の世界」の断絶の物語』なんて言葉で語られているのですが、何のことを言ってるのか、分かるような、分からないような。

私もたまに恋愛テーマで詩を書いていたりしますが、恋愛が局所的に終わるものではなく、世界の趨勢と関わっている・・・という考え方はちょっと、不遜な感じもして好きじゃなかったりします。

恋愛はあくまで恋愛で。それ以上でもそれ以下でもない。
私自身の感覚だとそうだなぁ・・・

このリアリズムはもしかしたら私が女性だからなのかもしれません。女性よりも男性の方がロマンチストだという説を聞いたことがありませんか。女性も愛や恋に夢を見たりはしますが、多分、男性よりも女性にとって「恋愛」は「現実」に近い。

男性はどこか「女の子」を好きになるという気持ちを、非現実として捉えているような気がします。
だから目の前の、生身の女性は別物で。イメージの世界でなら「ぼくときみ」の関係が、世界の破滅にも簡単に結びつきやすいのかもなぁ。

恋愛は恋愛として、「世界の破滅」について私は・・・

もともと「世界」って、人間の心の中とは無関係な「現象」としてただ存在するんだと思うのですよ。
地球も宇宙もそこにあるだけで意味はない。世界の始まりにも終わりにも人間は存在しない。そんなたいそうな存在では人間はない。

ただ、そういう元々意味のないところに「命」が生まれ、その命はなぜか世界に「意味」を求める。そのことを、不思議だなぁ~~とよく思います。

「恋愛」はその、人の「命」の思いの究極のパターン。
まあ、命が、この世界に存在し続けようとすれば、恋愛があってそこから新しい命が生まれなければ続いてゆかないから、生き物がそこに最高の価値を見出すのは必然と言えば必然ですな。
多分、恋愛ってのは、この、意味のない世界に「命」が存在し続けようとするが故にあるのでしょう。
(これって「利己的な遺伝子」っていうのに似てるかも・・・)

「セカイ系」は「大きな物語の喪失」から生まれたそうですが。

「大きな物語」はまだ存在すると私は思っています。
というか、大きな物語を作り出そうとする意志こそが、私たちがこの世に存在し、意味のない世界に、意味を見出そうとする・・・「生きることの証」のような気がするのです。
全ての物語は、それゆえに存在する。

半径3m以内に、全てのものがあるのなら、私たちは全ての物語を捨てて、目の前に存在する誰かだけを見ていればいい。他の動物や植物と同じようにあるがままに生きればいい。

でも、私たちはそうはしない。いつもこの世界に意味を求めようとしている。少なくとも私を含め、物語る者たちはみな。
多分、あらゆる「創作」は、命が、その限られた生の中で、世界に意味をつける、大きな物語を創り出そうとして生まれるものなのだと思うのです。
そして私たち人間は、そのためにこの世界に存在するんじゃないかと。

宮崎駿さんは、そういう意味で、同世代に生きる者の中でも、抜群のセンスにあふれた語り手だったんだけどなぁ~。彼の物語はいつも、見るものの生に「意味」を与えてくれました。

もちろん半径3m以内の世界も悪くはないんですが。
どっちかというと私はまだまだ、もっともっと大きな物語を見たい。自分じゃ作れないけど、世のニーズが優れた創作者を育てるなら、そういう作品を支持したいな~なんて思ったり致します。

うむ。私の記事の方がニュース解説よりも意味不明になってきたかなぁ。

私は押井作品の持つ世界観も、けっこう好きなんですけど、終わりなき日常を越えて、やっぱりまだどこかにたどり着きたいという野望を持っているので・・・まあ、それも、何かの掌の上かもしれないということは承知してるんですけどね。(「ビューティフル・ドリーマー」か。なつかしいな。)

この先、また、宮崎・押井という両氏を超える、「大きな物語」を創り出す勇気を持った創作者の誕生を期待したいところです。

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