poem(80)
「可能性」
7月の強い日差しの下
白いビルの間を人が流れていく
止まらない時間の中で
何かに押されるように
海の中で ある魚は
何億もの卵を産む
卵は波を漂い
ほとんどが孵らずに消えるだろう
”可能性”
時が私たちに与えたものは
ただそれだけでしかない
何億分の1の中に
意味あるものが生まれる
それで十分なはず
ならばなぜ
小さな卵に自我が宿り
波に飲まれる運命を
憂う心を持ったのか
何かに押されるように
きみも私も
「今」を未来へ向かい歩いている
命という殻の中に
不安と
焦燥と
諦めと
虚しさと
そして何億分の1の可能性への期待を詰め込んで
たった一人で
ただひたむきに
未来へ
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