poem(86)
「挽歌」
毎年その枝いっぱいに
美しい花を咲かせてくれた桜が
春をもう目の前にして
コロサレテシマッタ
寂しく残る切り株
廃材となった木の枝に
咲けなかった蕾を見るのが怖くて
思わず目を背けた
駅前の再開発は
もう何年も前から決まっていたことだった
・・・他に桜が何万本あろうと
失った人を悼んだ日も
大好きな人を思って空を見上げた日も
そこにあったのはその桜の木だった
世界は変わる
生きている私たちでさえ
その細胞は毎日入れ替わる
昨日と同じ日はなく
だからこそ新しい命も生まれ
育まれる
分かってる
分かってるんだけど
それでもあの桜の木に
悲しみと感謝の挽歌を贈ろう
いつか私が死んで
あの淡い桜色のヒカリに
再び迎えられる日まで
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