「ダメじゃないんだけどな~」という時に。
またちょっとAさんとBさんでたとえ話をします。
皆様の身の周りでこういうことがありませんか。
Aさんはとてもしっかりして立派な人。Bさんから見てとてもよくやっているし、えらいなぁと、常日頃、BさんはAさんについて思っている。
が、ある日、AさんがBさんにこんなことを言います。
「私は駄目な人間だ。何もかも人並みにやることができない。自分がやってきたことには後悔ばかりだ。なんで自分はこんなふうにしかできないのだろう。いつもそれを思うと辛い。私はBがうらやましい。なぜBはいつも明るく元気でいられるのか」
言われたBさんは「え~っ?」って思う。
よくやっているという点から言えば、Aさんのがはるかにがんばってる。努力もしている。向上心もある。
多分100人に聞いたら、圧倒的にAさんを評価する人の方が多いはずなんだけどなぁ。
で、BさんはAさんにこういう。
「Aは駄目じゃないよ」
でもいくら言っても、Aさんは「自分は駄目な人間だ」と繰り返すばかりだったりします。
BさんはAさんを励ましたい。元気になって欲しい。
さあ、Bさんはどうすればいいでしょう?
・・・私は自分がAさんになっていることもあるので、どっちの立場も分かります。
BさんとしてはAさんに元気になって欲しいだけなんですが、いくら自分の気持ちを伝えても、逆効果になってどうしたらいいのか分からない。
これ、以前やったコーチングの勉強を元に考えてみると、ちょっと整理ができそうかな。
まずBさんは、自分がAさんをどう思っていようとそれは関係ないから「Aは駄目じゃないよ」なんて言ってはいけません。いえ、言ってもいいけど、それは何にもならない。
「Aは自分を駄目な人間だと思っている」
まずそのAさんの言葉をそのまま受け止めることが大事です。
このとき大事なのは「受け止める」ってことはただ「聴く」ってこと。
肯定も否定もしない。間違っているとか正しいとか評価をしてはいけない。
「ああ、AさんはAさん自身のことをそう思っているのだな」
と、そう受け止める。コーチングのレッスンではそれを言葉にして返したりするのもしました。
「AはA自身のことを駄目な人間だ、と思っているんだね?」
とね。オウム返しでいいんです。「ミラーリング」っていうんだったかなぁ。
Bさん自身の主観を入れてはいけません。コーチは意見をしちゃいけない。
コーチ自身がどう思うか、なんてそれはこの際どうでもいいことです。
で、あとはAさんの話を正しく聴いていくことが大事です。
「正しく聴く」
まずは「事実」と「意見」を分けていくこと。
何をもって「AがA自身を駄目な人間と評価しているのか」その根拠となる事実は何か。
Aさんが
「私は○○だ。だから駄目なんだ」
と言ったら、「他には?」とどんどん訊いていく。
Aさんが答えたらそれをしっかり聴く。相手に返す時は事実だけを返す。相手の言葉が意見だと思ったら、その意見の根拠となる事実にたどり着くまで訊いていく。それだけ。
たとえばこんなかなぁ? 具体的な例を挙げてみましょうか。
A「私は悪い母親だ」 ←意見
B「悪いってどういうふうに?」
A「カッとなって子供をぶつときがある」 ←事実
B「子供をぶつのはどんなときに?」
A「食事をさせようとしても嫌がって食べないとき」 ←一部意見
B「○子ちゃんは嫌がって食べない時がある。それは毎日?」
A「毎日じゃない・・・たまに」←事実。ただしあいまいなのでもっと具体的に。
B「たまにっていうと週1回くらい? 月1回くらい?」
A「・・・分からない」
B「そっか。じゃあ一番、最近はいつだった?」
事実として何があったのか。BさんはAさんが言ったことを繰り返したり、要約したりして、
「いつ、誰が、どこで、何をしたか」(いわゆる5W1Hですな)
という事実だけをAさんに返していく。こうして話していくとAさん自身も自分の意見を客観的に見直すことができるようになります。最後に全ての意見を排除して「事実」が残ったら、そのときにBさんはAさんに尋ねる。
「ではAはどうすればいいと思う?」
そのときにはAさん自身、答えを導き易くなっているはずです。
上の例で言えば、子供をぶったときにAさんは、そして子供はどんな状態だったのか。その事実をちゃんと認識でできれば、Aさん自身がそれを客観的に判断できるようになる。これってかなり大事なこと。でもこうやって聴いてくれる誰かがいないとできないことです。
自分は子供をぶった悪い母親だ・・・その思い、つまり意見で心がいっぱいいっぱいになっちゃってる。それを解きほぐすことができれば自然と・・・なんとなく感じは伝わるでしょうか。
人の話を聞くときに、いかに自分が、相手の話を聞かないで自分のことばかりを話しているか。コーチングの勉強をしたときにこれはほんとにそう思いました。
自分がAさんになってみれば、Bさんの思いをいくら語られたって、「Bは自分とは違う」と思ってしまうだけなのにね。
一番まずいパターンは、BさんがちゃんとAさんの話も聞かずに自分のことばかり話してAさんの信頼を失ってしまっているにもかかわらず、
「ああ、Aは私がAのためを思ってこんなに真剣にアドバイスしているのに、ちっとも私の言うとおりにしない。一体、何なのよ、Aは。もうAなんかどうなっても知らない!」
と逆切れしてしまうことです。
気持ちは分からないでもないですが、こういうときに相手の立場に寄り添えてこそ、信頼というのは築き上げられるもの。
人から相談を受ける時は、自分の意見を言わない。それを意識するだけでかなり劇的に関係がよくなります。
家庭や職場やあるいは友人関係で、
「なんかうまくいかないなぁ」
と思った時にちょっと意識してみてください。
人に何かを相談されたり、悩みを打ち明けられた時って、何か解決法をアドバイスしてあげたいと必死になってしまうものです。もちろんそれが必要な時もあるんですが、多くの場合、アドバイスよりも、相談する側にとっては、正しく聴いてもらえる、そのことがはるかに助けになったりします。
コーチはある意味、何もしなくていい。コーチが問題を解決する必要はない。
コーチはただ、課題を抱えているその人自身が、正しい解にたどり着けるように導くことができればいい。
なんてねぇ。こういうこと書きながらも、私もつい相手のことを聞いてるつもりで自分のことばっかりしゃべっちゃってること多いです。
時にはこうしてコーチングのことを振り返ってないと忘れちゃうのよね^^;
皆様にも参考になれば幸いです。
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Comments
ブログには初めてお邪魔いたしますm(_ _)m
ていうか、ナニこれ……すげぇw(^^;
って感じで、
まさに今、私が葛藤していることが書いてあって、
やはり先人の知恵はあなどれん……と、
碁縁に感謝することしきり^^
本当に、スゴく参考になりました!!
ありがとうございますm(_ _)m
Posted by: Ray | 2010.04.08 08:52
Rayさん、ブログへもようこそ~
上の話、私自身がよく失敗してドツボにはまってるんですよ^^;
A「私って駄目なのよね」
私「Aは駄目じゃないよ~。Aが駄目だったら私なんかもっと駄目だよ。だってさぁ、この間もさ、ああいうことやこういうことがあって・・・」
誰もてめーの話なんか聞いてねーよ、ボケ!みたいな(爆)。
コーチングのレッスンの時は、実際に図星過ぎてグサッとくることがありました。
相手の悩みをなんとかしてあげたいという「自分の気持ち」で自分がいっぱいになっちゃって。
「それはBUBIさんの気持ちであって、今、大事なのはAさんですから」
と注意を受けても、
「人のために一生懸命になってることの何がいけないの?」
なんて思ったり。(それが、だから「自分」に捕らわれてるってこと)
自分の意見を言わないだけで、劇的に関係がよくなるというのはどうもほんとのようです。
特に夫婦の関係とか、親子関係においては、大体「相手のためを思って」言ってることが関係を悪化させていることが多いみたい。
ただ耳を傾ける。
そして相手の言ったことを、
「あなたの言いたいのはこういうことね」
と確認しながら聴く。
コーチングって面白いです。
私は職場で研修を受けたのですが、Rayさんももし何かで接する機会があったらおすすめです^^
Posted by: BUBI | 2010.04.08 22:07
うわ……やっぱりスゴい!!^^
BUBIさんも抱きしめたい人リスト入り決定ですw
ハグ~!!^^
Posted by: Ray | 2010.04.09 07:45