「普通の家族がいちばん怖い」
「普通の家族がいちばん怖い-徹底調査! 破滅する日本の食卓ー」
という本を図書館で借りてきて読みました。
・・・面白い!
いえ、実は、読み終わった後は、
(うわぁ、これが今の日本の「普通の家族」なのか・・・怖い~・・・)
などと思っていたのですが、Amazonのレビューを見たら、ちょっぴり調査そのものに偏りがありそうな感じで。そっくりそのまま事実だと思ってしまうといわゆる「トンデモ本」の類になってしまいます。
つまり、ほら「食べてはいけない」みたいな本と同じで。
確かに人体に有害な物質がその食品に含まれている可能性はあるけど、客観的に判断したら、ごくごく微量で、それもすぐ排出されるから大丈夫、みたいなね。
私は本を読むとすぐ本に書いてあることに影響されてしまうたちなんで「食べてはいけない」も読んだ当初はかなりその内容に震撼したものですが、「食べてはいけないは読んではいけない」というようなタイトルの本をまた別の機会に読んだら、1のことを100というトンデモ本だという論旨でした。
たとえば味噌は大量の塩分が含まれていて、味噌を取りすぎると肝臓が破壊される。
でも味噌ばかり大量に摂る人は現実にはいなくて、逆に発酵食品としての効用が味噌の場合はあるわけです。
「味噌は大量の塩分が含まれていて、とりすぎると肝臓が破壊される」
確かに嘘じゃない。
嘘じゃないけど・・・ってことです。「食べてはいけない」もそういう本。
そういう本は、読み手がしっかりと事実を踏まえて読めば参考になります。
「普通の家族がいちばん怖い」も、そう思って読めば、とても面白いです。
今は、ここで書かれているような家庭も実際に実在するんだろうし、その割合が増えていることも確か。
それに、私の実感からしても、そういう家庭って増えているんだろうなと。
この本で書かれている「普通の家族」って何かというとですね。
この本は、正月とクリスマスの家庭の食卓を通じて、どれだけ日本の食卓が崩壊しているかを著わした本です。
Amazonを見るとどうやら文庫になっているようです。
文庫版のAmazonのぺーじはこちら。
興味のある方はぜひ読んでみてください。
いわく、今の30代、40代の主婦たちは、お正月におせちを自分で作らない。
実家に帰ればおばあちゃんたちが用意してくれている。
自宅でおせちを用意する家だって、実家からもらってきたり、買ってきたものだったり。
まあ、どっちみち子供は食べないから、日本文化の継承のため、一応、買ってきたものをディスプレイ的に食卓に飾りはするけれど、飾り以上の意味はない・・・とかね。
あとお屠蘇もみんなが好きなものを飲んでいる・・・とか。
一方、クリスマスは飾りつけや、子供にサンタクロースを信じさせることに夢中。
理由は「自分がクリスマスを楽しみたいから」で子どものためじゃない。
クリスマス料理は、買ってきた鳥もものローストやフライドチキン、それに冷凍のピザ、フライドポテトなど。
簡単で手がかからない。
正月だというのに、家族一緒に食卓につかない。
家族バラバラで好き勝手なことをしている。
食べるものもみんな好きなものを好きな時にバラバラに食べる・・・などなど。
著者は、家庭の主婦が「自分中心」になってきた、と分析しています。だから面倒なことはしない。楽しくないことはしない。子供に対しても機嫌ばかりうかがい、子供のやりたいことを全てにおいて優先する、と。
う~ん・・・ま、この先は皆様、ぜひ、本を読んでみてくださいね。
30代から40代の主婦、なんて、年齢的には私にジャストミートで、まるで自分のことを言われているようだったなぁ。
その世代の女性が「自分中心」なのだとしたら、まさにそれを極端な形にしたのが、主婦どころか、結婚してない私のような女性になるんだろうし。
でも、そうねぇ、もし私が結婚してても、おせち、作ってないかも。
そもそも、私も親からおせちの作り方は習わなかったもんなー。
実家にしてから、黒豆もきんとんも買うものでしたし、煮しめは私、本を見て自分で作りました。親は作ってなかったな。
想像ですが、多分、私の母自身も親から習わなかったんじゃなかろうかと。
ということはもう三世代に渡って、日本の伝統なんて、そこに存在しないのです。
お屠蘇の習慣も私の実家には皆無でした。
なので、私はこの本を読んで、実は、著者が「本来こうあるべき」と思っているらしい正月像がすでにピンとこないのです。
それは、日本の伝統うんぬんということでなく、中流以上の家庭はどうか知らないけど、おそらく、祖母の代から、おせちが受け継がれていず、お屠蘇の習慣もなかったのは、当時のその家庭があまり裕福じゃなかったからに違いないからで。
つまりこれが何を示すかというと・・・おせちを作るも作らないもそこにはそれぞれの家庭の事情がある、といういうだけの話。
それを「日本の食卓の破滅」とか言われてもなぁというのが正直、あります。
でも、家庭の主婦を例にとっても、全てが自分中心となっているようだ、という論旨については、同意。家庭というだけでなく、個人主義がどんどん進む社会にあって、そのことがそれまでなかった社会的な・・・まあ「歪み」と言えば「歪み」なんでしょう・・・問題を生み出しているのが、現代社会だというのは確かなことで。
私自身、それを体現している一人として、いろいろ考えさせられます。
過去、「常識」であり、それが日本の良さとして捉えられてきた事象が、すべて「個性」の名のもとに多様化し、あらゆる在り方が可能となってきています。
たとえば40過ぎても結婚していないという「マイノリティ」である私にとっては、それはとても・・・ぶっちゃけ「都合のいい」ことではあるのですが、この本が示唆しているように、そういう多様化や個人主義が、日本のこの先をどう形作るのかという問題があります。
「気持ちのいい」「都合のいい」「楽しい」ことだけを優先して、嫌なこと、面倒なことを先送りして、本当に向き合わなければいけないことややらなければならないことをやらずに、そのせいでうまく回らなくなっていることを誰かのせいにしていないか???
このままで本当にいいのか? それをみんな真剣に考えているのか?
そう、今、この本を読み終えて感じています。
「普通の家族がいちばん怖い」ねぇ。
家族がいない、一人暮らし世帯が増えているのだから、なんかあと数年後には「家族でいるだけいいじゃないの」なんてことになりそうな。いや、現時点で、私はそう言えちゃう。
それでいいのかな? 本当に?
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