電力は足りているか?
私は自分のことを常々、一般大衆に一番近い人間だと思っています。
くだけた言い方をすると「ミーハー」です。
これってある意味プラスに働くこともあって、たとえば私が「次はこれがヒットするかもな」と思うコミックは、たいていヒットして、ドラマ化したり、アニメになったりします。
で、この、一般大衆代表としては、今回の選挙にあたって脱原発は大事なキーワードで脱原発って言えない人にはあまり投票したくないなぁと思ってしまいます。
という話をツイッターなどに書くと「脱原発は理想論だ」と言われたりもするんですが・・・
果たして原子力発電所のほとんどが止まっている今、電力は足りないのでしょうか?
それとも足りているのでしょうか?
ネットで意見を拾ってみると両論あり、何が真実なのかの見極めが非常に難しいです。
今、現在、私個人にはあまり電力が足りない実感はありません。
計画停電もないし、駅のエスカレーターは動いている。
それが「一般大衆」の感覚。
私が原子力発電はもうやめたほうがいいと思う理由は、やはり事故があったからです。
一度事故を起こせば取り返しのつかない被害をもたらす。
これは人間が扱ってはならない技術だったんじゃないかって。
使用済みの燃料の保管だっていくらプルサーマルだ、再利用だと言ったって結局明快な答えにはなっていない。問題を先送りして、その場しのぎで、取り返しのつかない負債を未来に残す恐怖を感じます。
いくら地下に深く埋めたって「想定外」の地震が何百年後かに起これば、放射性物質で周辺が汚染されることだってないとは言えない。
人は、そんな自分の寿命より長い期間処理に必要なものを、自分の寿命の間のエネルギー確保のために使ってはダメなんじゃないかなぁ。
原子力というものを人類が活用し出してからたかだかうん十年。この時代だけを「暗黒時代」として、もうこの技術は封印しようよ、と率直に思うんですよね。
でも理想論だと言われる。
電気は足りないんだと言われる。
原子力がなければ日本はだめになると言われる。
そうなの?
なんというか…ネットを見ていると
「電力は足りている」側に言わせると「電力が足りないというのは原発推進派の陰謀」で、
「電力は足りない」側に言わせると「電力が足りているというのは現状認識が甘い阿呆」ということになっていて、真実がどっちなのか全く分からない(-_-;)
私はノンポリシーなのでフラットに現状を眺めると。
おそらく当面は電力は足りています。
ただ、いくつか問題はあって。
・石油や天然ガスなど、火力発電に使う燃料がどれだけ保つのか。値段が上がったらどうするか
・その結果、電気料金も上がる
・古い低効率の火力発電所をフル稼働させてなんとか保たせているので、その設備をリニューアルしなければいけないという問題
・CO2が増える
・太陽光や風力などの自然エネルギーはとりあえず安定供給の代替には成り得ない
・地熱や核融合もまだまだ
・もし停電になったら赤ちゃんや年寄りなど弱者に犠牲が出る
ただ、これが「だから原子力発電を続けないとだめだ」ということにはならないと私は思っています。
当面、火力、水力などでなんとかやっていき、古い火力発電所も順次新しくしてがんばっていく。
太陽光や風力がなかなかむずかしいのは分かってますが、それらも取り入れていく。
地熱も研究する。
核融合もとりあえず技術開発を待つ。
迂遠と言われようとも、あきらめずにやってかねば。
役人や官僚の人たちは最初に答えありき。
おそらく足りる計画も足りない計画も作れる。
だから、反原発、原発推進、どっちが政権をとってもそれに合うような計画を作ってくる。
決めるのは国民。そして次の選挙。
脱原発と原発推進、クイズではないので、おそらくどちらが正解ってないのでしょう。
脱原発で原子力発電のリスクは回避できても、常にエネルギー危機のリスクはつきまとう。
原子力発電に変わる発電技術は早々には現れないでしょう。その意味では非常に困難な選択です。
でも「困難を理由に義務を怠ってはならない」。
安倍さんが総理大臣をやめたのはやる気がなくなったからではなく病が理由だったらしいと知ってから、安倍さんにもう一度政権を担当して欲しい気もしているのですが、やっぱり原発推進がネックなんですよね・・・
今すぐとは言わなくても「○○年までに脱原発を目指す」くらいは言えないものかなぁ。
はっきり言ってもう東電に利権もくそもないと思うのですよ。
東京電力はとてつもない負債を背負ってしまっています。
安倍さんくらいになったらもう怖いもんなんてないでしょ。
今、脱原発を言えなかったら選挙に勝てないのは分かってるはずなのに。
どうしても原発が必要なら、ちゃんと我々=一般大衆を説得して欲しい。
選挙までにNHKスペシャル、もしくは朝まで生テレビでこれ、やってくれないかなぁ。
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Comments
>おそらく足りる計画も足りない計画も作れる
その通りでしょうね。Nスペや朝生でやっても、結論は出ないでしょう。だからこれは思想の問題になるわけです、自分はどっちかという・・・。ただ、単に「こっちがいい」と言うだけでは少し弱いので、多少は理論武装したいものです。
もし脱原発なら、僕は「福島の原発事故をめぐって」(山本義隆、みすず書房2011¥1050)をお勧めします。難しい物理学は不要です。
Posted by: 春海 | 2012.11.20 12:35
電力は原子力発電が無くても足りるというのがどうも正しいようです。
しかし原子力発電に関する技術を持っている国は非常に少なくて日本はその最先端の技術を保有しているということのようです。従って日本が原子力発電を止めると日本のその技術が発展しなくなり、原子力発電している国には困るということで、先般2000何十年に原子力発電を止めると政府が言い出したら直ちにアメリカ政府から圧力がかかり、民主党政府はすぐに見解を実質的に変更しました。
産業界も原子力発電関連技術が無いと産業の発展が遅れるということで大反対しました。だから今話題の橋下さんも原子力発電に関する意見は既に実質上変更しています。
問題を電気との関連だけで考えるのは狭小なのかもしれませんが、原子力発電は事故が起きると恐ろしいことになるという以外に、発電量の調整が難しいという特徴があるそうです。いったん稼働し始めると電力消費をそれに合わせて増やさないといけないということですね。つまりじゃんじゃん電気を使って下さいと奨励することになるわけです。
Posted by: mikoinrp | 2012.11.23 12:43
春海さん、mikoさん、いらっしゃいませ。
春海さんに紹介いただいた本に関する論評をネットでいくつか拾って読んだのですが、かつて原子力発電は核開発や核抑止力と明確な関連があり、米ソ対立の時代の時代は、核保有を表向き禁止にしていた日本にとっては、そういう意味で「原子力施策」は欠くべからざるものであった・・・というのは真実だと思いました。
しかし、あれから時代が移り、現時点では日本が核を持つということはどうなんだろうなぁ。
石原氏のように一部に核保有にこだわる人もいますが、一般大衆は
「日本に核? じょーだんでしょ」
という感じだと思います。
本文に書いたように、原子力ではないもので、エネルギー問題を解決しようとすることは一朝一夕でなんとかなることではないのですが、それに向けて努力してかなきゃいけない気はどうしてもします。
mikoさんのお話をお聞きすると、
・原子力の技術は危険と隣り合わせだけど、この技術を人類として封印してしまうのはもったいないので、どこかでは研究し続けてほしい。だから極東のエネルギー資源を自国でもたない国に研究させよう。もし事故が起こっても、アメリカやヨーロッパには影響少ないしね♪
ってもしかしたら思われてるんじゃないかという気もしたりなんかして。
つまり、日本=福島県双葉町。
人のいないところに原子力発電所を建てればいい。んで研究してくれればいい。
(日本に人はたくさんいるけど欧米人にとっては身内じゃない)
何かしら事故が起こっても、
「リスク承知で自分とこに誘致したんでしょ。それでおいしい思いもしたのでしょ。自業自得だよ」
って日本全体が言われるのかも。
…ひどすぎますね。そんなこと許されない。
そうじゃないことを祈ります。
Posted by: BUBI | 2012.11.23 14:15
電気は足りていません。
そもそも「電気は足りる」ということは、「発電余力が10%以上確保できている」ことを指しています
そうでないと、天気予報が大きく外れたり、発電所の故障が複数個所同時に起きた場合の対処ができません。
現状はどの電力会社でも余力は3%くらいしかありません
しかも、ヒトデが付いてたような老朽火力を半年以上かけて復旧し、車で言う車検も特例で伸ばし、年間3兆円の赤字を出した上で、その状態です
「停電が起きなかったから電気は足りている」というのは、単純な結果論です
その裏で電力会社はむちゃくちゃ理不尽な努力を強いられています。もちろん赤字なので人は増やせません
これから火力を増強するにしても、その費用は誰が出して、その人件費はどうするのか、そして兆単位の赤字をどうするのか
その辺りを「脱原発」を掲げる政党は一切示していません
こういう現状を考えれば、本気で政治を考えている政治家なら方針の立たない「脱原発」なんて言えるはずがありません。
私は「脱原発」を言ってる政治家は、そういうことだと考えています。
そもそも、今回の選挙は「まともに政治ができる政党」を選ぶべきだと思います
民主党政権の3年半で日本の政治は無茶苦茶にされました
まともに予算は組まないし、海外に大金を流すし、超円高を放置し、震災対応もまともにできず、復興政策は一切作っていません
そのツケを払うのにも時間がかかります
各党のマニフェストをしっかり読み込み、実現可能なプロセスまで考えられているかどうか
それをしっかり見極める必要があると思います
原発・増税・TPPはその次の話です
Posted by: | 2012.11.28 15:16
丁寧でわかりやすい、コメントありがとうございます。
まともに政治ができる政党…ほんとそうですね。
Posted by: BUBI | 2012.11.29 00:12
僕はそれらの書評を読んでいませんが、ぶびさんがお書きの部分は第一章ですね。この本は三章構成になっており、二、三章にも著者の重要な主張が書かれています。
僕の読み方では、最大の眼目は第二章にあります。おおざっぱにまとめれば、次の通りです。
:原発は、何万年もの無害貯蔵が必要な放射性廃棄物を生み出し続け、ひとたび大事故が起これば時間的空間的に甚大な悪影響を及ぼす。それらを解決できる技術を人間は作り出すことができない。従ってやめるべきである。:
二十代だった40年ほど前、素粒子論で将来はノーベル賞もと期待されていた著者を、僕は信用しています。ぶびさんが信用するかどうかはわかりませんが、一読をお勧めします。
Posted by: 春海 | 2012.11.30 15:00