「黒執事」-千の魂と堕ちた死神-(ネタバレあり)
「黒執事」-千の魂と堕ちた死神-(ネタバレあり)
昨日、2013年5月19日に『ミュージカル「黒執事」-千の魂と堕ちた死神-』を見に行ってきました。
そういうミュージカルがあるという話は知ってはいたのですが、見たのは今回が初めてです。
「黒執事」には最近、実写映画化の企画もあって正直「う~ん^^;」と思わないでもないですが、噂では同じ実写(?)でもミュージカルは評判が悪くないのですよ。
持ち前の好奇心が勝ちまして、幸い、チケットも取れたので見てみました。
感想は…うん、これは面白い。
ちゃんと黒執事のお約束を踏襲しつつ、暗くなりがちで地味な展開にユーモアを添えている。
アニメの時も思ったのですが、シリアスな展開ばかりでなくオバカ要素も盛り込んでいて、私はこういうの好きですね~
周囲の観客は若い女の子が多く原作ファンも多そうですが、概ね「面白かった~」という声が聞かれていました。
これがないと黒執事じゃない、という要素を全て外さずに取り入れ、一本のお芝居としてまとめ上げている、脚本もさすがです。
それ以上に役になりきってるキャストの皆様にはむろん脱帽ですが。
グレルもアンダーテイカーもウィルもあまりにもそのもの過ぎて違和感を全く感じないのですが、それって実はものすごいことです。
何回も同じものを公演しているせいもあるのかな。だとしたらミュージカルってそれがいいですね。今回は三作目、厳密にいうと二作目の再演なのですが、それだけに十分こなれている感じです。人間がやっている以上、1回目よりは2回目、2回目よりは3回目、よりよくしていこうと思いますものね。
私はあの「黒執事」をこうしてそのままミュージカルにできてしまうことそのものに感動してしまいました。
でも、登場人物は同じで原作のエピソードを部分的に取り入れている箇所もありながら、ストーリーは完全なオリジナルなのです。
(この先はネタバレです。)
死神なのに死をもたらす相手である人間に同情してしまう死神、アラン。
なのにそのアランになぜか、死神が人間に死をもたらすが故に背負う「業」のようなものである「死の棘」という病が襲いかかり、彼はそれに苦しんでいます。
そしてそのアランを大切に思い、その病を癒やせるたった一つの方法を実行に移す死神エリック。でも「方法」たっておとぎ話のような、要はやってみたってホントに病が治るのか分からない不確実なものではあるのですが…エリックとしては万に一つでも可能性があるのならそれに賭けてみたいと思った。
その方法が千の魂を集めることだったのです。
死神は通常、死亡予定者リストに載っている人間を淡々と審査して淡々と魂を奪うのですが、エリックが魂を集めた人間は当然リストには載っていないので、死神派遣協会にも追われる身となる。
そして、その原因不明の死に、女王の番犬である悪の貴族、シエル・ファントムハイヴとその執事セバスチャン・ミカエリスも捜査に乗り出す、と。
捜査というかシエル達の場合は、犯人が分かったらその犯人を排除することが役割なんですけども。
アランのために999人の罪のない人間を殺害し、魂を集めたエリック。でも最後の一つで失敗する。
エリックを捕らえようとしたシエルを1000個目の魂にしようとエリックがシエルを襲った瞬間に、それ以上、エリックに罪を重ねさせたくなかったアランがシエルをかばってその刃に倒れる。
友を助けるためならどんな非道い罪を背負おうともためらわずに人間を殺し続けたエリックの願いは、最後の最後にその友の行為によって阻まれる。
それどころか大切な友を自分の手で殺してしまう。
絶望したエリックをシエルの命令によりセバスチャンが殺す。
そうして事件は解決します。
…こうやって書くと全く救いのない陰惨な物語ですね。
シエルは最後に言います。くだらない事件だったと(「つまらない」事件だったかな?)。
ちょうど私もそう思っていたので、なんだかシエルの不埒な言い草にちょっと救われてしまいました。
死神なのに死を恐れ、死神なのに孤独を恐れる、なんてね。
「一人で生まれ、一人で死ぬ」
そんなことは人間にとっては当たり前のことです。
理不尽なことも、逃れられない運命も、かなわない願いも全て、当たり前です。
シエルは、もしかしたらエリックのしたことを一番よく分かっていたのかもしれません。
守りたいものを守ろうとして999人の人間を殺害した死神。
運命に屈することをよしとしないのなら、そこから力ずくで這い上がるしかない。
それはシエルもやってきたことだから。
でも弱かったらさだめを跳ね返すことはできはしない。
シエルは女王の命令により死神を始末した。
そこにはただ強い者が弱い者を排除した図式があるだけで。
その絶対的な価値観の前には善も悪も存在しません。
ただし自分のやったことは自分に跳ね返る。それもまた真実。
シエルもその覚悟は当然あって…「黒執事」にハッピーエンドはあり得ません。
いたいけな少年の魂が悪魔に喰われて終わる。
その凄惨な結末が分かっていても束の間のひとときに夢を見る私たち。
セバスチャンなら
「だから人間って面白いんですよね」
とか言いそう。
くだらないんだけど…
そう、999個の魂が結局何の意味も為さずに天に昇っていく光景がたとえようもなく美しかったように。
アランとエリックの歌は美しかったな。
ひとりきりで生まれ、ひとりきりで死んでいく。
さだめだと分かっていてもそれをつらく悲しく感じるのはなぜなのか。
そして…そういう孤独を感じている者同士が出会い、永遠の生を共に歩む。
くだらない夢かもしれないけれど、人間ってのはそういうのにロマンを感じる生き物なんですわ。そう、私もね。
いや、ベタといえばもちろんベタですよ。でも私はこういうベタな話が好きなのー♪
『ミュージカル「黒執事」-千の魂と堕ちた死神-』、6月9日には、千秋楽の舞台が全国の映画館で「ライブ・ビューイング」されることが決まっていますのでまだ見ていない方は(これだけネタバレしてて「見ていない方は」もないものですが)ぜひ♪
19日の舞台ではアンコールの最後に「フェニックス」のポーズを披露してくれました(笑)
こういうファンサービス、最高に嬉しいです♪
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