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2014.10.14

「紙の月」

 「紙の月」(著:角田光代)という小説を読みました。
 銀行に勤める女性が巨額の横領をしてしまう、という話ですが、読んだ後に分かったのですけど、この話は映画になるそうです。宮沢りえが主演ですって。NHKのテレビドラマにもなったそうです(こちらは原田知世が主演)。

 う~む。テレビドラマ化や映画化という話を知って、私が最初に感じたのは
「あんまり見たくないな」
 でした。
 ・・・この物語の中にあるんですよ。
 知り合いが横領事件を起こしたと知って、面白半分にその話題を取り上げて話題にする元同窓生達。
「男に貢いだんだろう」
 と単純な型にはめて、その話題がカンタンに消費されていく。
 この話をドラマや映画にするのはまさにそういうことのような気がして。

 ドラマを私は見ていないし、映画の公開はこれからだけど、そういうのになっちゃうと、あまりにも単純で表層的な話になってないかなぁと心配です。いえ、この物語の中で語られる事件自体は、まさに単純でもしかするとよくある話なのかもしれません。だから、この物語をそう表現することはカンタンです。
 でも、この小説の魅力は「単純でよくある話」な事件の裏側で、そういうことをしてしまった女性が何を考え、どうしてそういうことになってしまったか…読む者を彼女の側へ引き込み、自分の物語として私たちが再構成することにあると思うのです。

 いやぁ、私、引き込まれました。そしてこれがどんな話であったか、自分の気持ちの中で、整理せずにはいられませんでした。

 阪神大震災と地下鉄サリンの事件が出てくる描写があり、照らし合わせると私はおそらく主人公の彼女とほぼほぼ同年代。だからだと思うのですが、なんかねー。身につまされるのよね。

 ただ、私には少なくともああいう類の衝動はないな。自分の価値をお金で証明してみせたりはしないし、できると思ったこともありません。
 主人公は馬鹿だと思います。若い男の子にいいものを食べさせたり、旅行させたり、車買ってあげたり、別に彼が望んだわけでもないのに、自分の生きる意味みたいなものをそこにしか求めることができないなんて。
 なんというか…いやあ「馬鹿」しか言いようがない。
 最初から何もかも捨ててタイに行っちゃえばよかったのに。

 でも、よく考えると「昔」はそうだったのかも。
 無意味に自分のプライドのために、女性を下に置いておかなければ気が済まない夫。今でも実際はそういう男性は多いのでしょうけど、だからこそ、そんな男性と無理して家庭を持つようなことをしない女性が多い世の中に、現代(2014年)はなってきました。だから非婚率は上がってるんですけどね。
 引き替え、彼女の時代は、短大出て結婚して、みたいなことが普通でした。それ以外の女性の生き方は、ない、とは言わないけれど非常に少なかったし、女性が結婚しないで年を重ねるとマイナスの評価を受けたりもしました。だから、彼女も自分の夫に小さな違和感を覚えつつも、その枠の中で、どこへも行けずに、お金を使うことで自分を表現するしかなかったのかもしれません。
 

 自分がどう生きるかは、自分で決めるもので、誰かに決めてもらうものじゃない。
 誰かの評価がなければ生きていく意味がないわけじゃない。
 
 道ばたに咲く野花は誰かに評価されるためにそこで咲いているのか。
 実をつけずに抜かれてしまうのなら、そこに存在しない方がよかったのか。

 「意味」を問うこと自体が無意味のような気がしてなりません。
 思いのままに、そこに在ることだけで、十分に意味はあるのではないかしら。私はそう思いながら日々を過ごしています。

 タイでやり直せたらよかったのになぁ、彼女。

 「生きる意味」とか高尚なことはともかくとして、私は読み終えた後、自分の貯蓄額チェックをしてしまいました。
 貯蓄したと思ってた額がいつの間にか消えてたりしたらやだもんなあ。
 皆様もどうぞお気を付け下さい。
 お金は、自分を表現するものではないけれど、生きていくにはけっこう大事ですので。

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