新年、あけましておめでとうございます。今年も本ブログをよろしくお願いします。
さて表題の「Nのために」は湊かなえの小説ですが、前クールでドラマにもなったので、見た方も多いのではないでしょうか。
私は原作がたまたま手に入ったので、ドラマよりも先に原作を読みました。
登場人物の、事件に関する事情聴取から始まる出だし。
読みながら1章が終わったところで本を置いて、自分で、起こった出来事、入室順、各人物の供述の食い違いなどを洗い出したりして、途中までとても面白く読めました。
そういう謎解きの話なのかと思ってたんですよ。
余計だと思った供述に真実があったりするのかと。
でもどうも違ったみたいだなぁ。
読み終わった後、なんかもやもやするので、そのあとテレビドラマの方もまとめて見ています。映像でいくつかの謎は解決されましたけど、まだもやもやしてます。以下、感想です。
ネタばれしてますので、これから読む方はご注意ください。
【成瀬】
私は最初、彼らの嘘にだまされて成瀬君のことをただのケータリング業者と思っていました。
たまたま同じ島出身だったから、それで希美経由で野口さんが成瀬君にケータリングを頼むことになった。
まあそれは彼の嘘で、本当はお姫様救出作戦に彼が希美に対する気持ちを利用されて、巻き込まれた、というのが真実なんですけれども。
そういう意味では成瀬くんはかわいそうでした。
一方的に利用されただけ。ま、損もしてないけれど。
彼が殺人に関与していないかったことは確かで。
だって、殺人が起こった時、彼は部屋の外にいましたから。
彼のNは希美。
それははっきりしています。
【安藤】
小説で、一番、謎だったのは安藤なんです。
男性だか女性だかも最初からずっと疑問でした。
ドラマでは、最初から男性で登場するし、彼が希美を好きだったこともストレートに伝わってきます。小説では何を考えてるのか分からなくて、殺人犯はこいつかと思ったのですが、安藤が殺人の起こった時刻にラウンジにいたことは第三者の証言で明らかでした。
じゃあ安藤は殺人犯じゃないし、そもそも彼は相手を殺す動機がない。
実は小説を読んでいたときは、安藤がそんなに希美が好きだったなんて知らなかったので、なんで外側のチェーンをかけたのか、疑問でした。
安藤は自分だけ計画から外されたのが悔しかったのですね。
代わりに成瀬なんて知らない奴が計画に噛んでいる。ふざけんな、ということです。
なのに、西崎さんのために弁護士をつけたりいろいろ力を尽くしたなんて、いい奴だ。
安藤が男性なのを知らなければ、西崎さんを好きなのかとか、安藤と野口さんが怪しいのではとかいろいろ推理しましたが、全てはずれでした。
安藤の方が成瀬くんよりかわいそうかな。
彼も片思いでしたから。
【西崎】
彼は望みどおりになって本望なのでしょう。
希美の代わりに罪を負うことなど当然だし、それをすることで、奈央子を助けられなかった自分の贖罪としたわけで。
彼の行動にはあまり疑問はありません。
【希美】
希美はちょっと感情移入しにくい女性でしたねー。
結局、成瀬君を好きなの?
希美と成瀬君は両思いなのにすれちがってんだよなぁ。
でも、そのすれ違いっぷりというのはどこかでよーく知ってるような。
つまり、彼女は自分が相手を好きなだけで、相手に愛されるのが苦手なのです。安藤に対してもそう。成瀬君に対してもそう。相手の罪を背負って、それさえ相手に知らせずに黙って身をひく。
このやり方って、見る人が見れば「美学」なのかもしれないけれど、私は大っ嫌いです。
昔、ユニコというアニメがありまして。
ユニコは出会う人を幸せにするのですが、幸せにした相手のそばには居られない。
そのアニメを見て私は「なんてひどい話なんだ」と思いました。
どんな幸せも「愛した人と一緒にいる幸せ」に勝るものはないのにね。
ユニコは勝手に誰かを愛し、愛した誰かを幸せにし、そして去って行く。
自己満足ですよ、そんなの。ユニコがそばにいてくれてそれで幸せになった「誰か」はそのあとどうしたらいいの?
愛は自己満足であってはならない。自己満足だけの愛は、愛する人を不幸にする。
人は愛されることにもうまくならなければならない。
私はそう思っていますが・・・
つまり希美もそういう女です。成瀬君に、安藤にあれだけ思われながら、
「私のことはいいのよ」
と突き放す。思いを受け入れることができない。そのことで安藤も成瀬君もどんなに傷ついていることか。
「愛する人に幸せであって欲しい」私達の本当の願いなんてそれに尽きるんです。なのに。
「Aが幸せでなければBは幸せでない。Bが幸せでなければAは幸せでない。」
そうして二人とも不幸になる。いわゆる「賢者の贈り物」です。
このジレンマを脱出するには、どちらかが先に幸せにならなければ。おそらく、安藤も成瀬くんもそれを知っていたはず。そして希美を引き上げてくれたはず。なのに・・・
彼女は自分の幸せは自分でつかむつもりでいた。その結果のガン。余命宣告。なんてひどい話。
真犯人を捜すのが目的の物語ではない。
では何をどう感じるための物語なのかなぁ、これ。
実はよく分かりません。
「みんなが大切なNのために行動した。」
それはよく分かりました。
だから何なの?
ちなみに、ドラマでは島の描写が微妙でした。希美の母親も不愉快なだけだし。私はああいう毒親と、毒親に支配される娘という絵柄が、まるで自分のことのようで、個人的なトラウマにより拒否反応が出てしまうみたいです。
でも、考えてみれば・・・愛されることに苦手なのも自分。人を愛せても愛されるのは怖くて、身をひいてしまうのも自分。だからこそせめて希美には幸せになって欲しかったのに。
どうやら私のもやもやの原因はそれのようです。
書いてみて少しすっきりしました。
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