反グローバリズムとは
あるところに小さな村がありました。
その村に住む人はみんなが自分の家の前に小さな畑を持っていました。
みんな、自分の食べるものは自分の畑で作って暮らしていました。
ところがある日、住民の一人、Aがこんなことを言い出します。
「ねえ、おれたちってさ、みんながそれぞれ自分の畑で、芋を植えたり、野菜を育てたりしているよね。
こういうのってさ、分担決めて、たとえば
Aの畑 芋
Bの畑 豆
Cの畑 キャベツ
Dの畑 大根
って、自分の畑では担当の作物だけ育てた方が「効率的」なんじゃね?
いろんな作物を自分の畑で作るよりも楽だと思うんだよね」
みんなはそれを聞いて「そうかもしれない」と思ったので、担当を決めることとしました。
確かにこれで少しみんなの仕事は楽になりました。
今まではチマチマ、1年中働かないといけなかったのが、自分の担当の作物だけを育てればいいことになったので。
作った作物はそれぞれ自分の畑で取れたものと交換して今までどおりいろいろな作物を手に入れることもできました。
ところが、ある日、CがBにこんなことを言いました
「Dの畑の大根ってうまくないよね。すかすかでさ。すっげーからいし」
Bも言いました。
「俺も実はそう思ってた。前に俺の畑で作ってた大根の方がめっちゃうまかったよ」
そこでBはこっそり豆畑の片隅に大根を植えて、Dの大根はもらわないことにしました。
Cも自分のところのキャベツをDとは交換せずに、Bに多めにあげてBが作った大根をもらうことにしました。
Dはキャベツや豆を譲ってもらえなくなりました。
そんなある日、Cの畑で青虫が大発生し、キャベツが全滅しました。
交換するものがなくなり、Cは飢え死にの危機に直面します。
Aは「困った時はお互い様だ。みんなでCを助けよう」と言い、Bも賛同しましたが、Dは自分の作物をCにあげることはしません。
別にキャベツなんかなくても生きていけますし。
Aは
「俺の言うことを聞かないと芋もやらないぞ」
とDを脅します。DはBがこっそり大根を作ってCとBで食べていたことをAに訴え、自分の正当性を主張しましたが、Bは大根を作っていたことを隠蔽し、Dの大根がまずいことを声高に言い始め、Dは畑仕事がへたくそだ、そんなヤツとはまともに取引するヤツが馬鹿だなどと攻撃します。
Aは困ってしまいました。
実はAもBが大根を作っていることを黙認していたのです。Dの大根がまずいことはAも分かっていたので。
AはDを説得するのをあきらめ、Dと交換する予定だった芋はCを助けるのに使いました。
そしてBが大根を作るのを認め、Aも大根をBからもらうことにしました。
激怒したDは、A、B、Cと縁を切り、独自で豆や芋やキャベツも作り始めることにしました。
・・・つまり「反グローバリズム」ってこういうことですかね。
いえ、トランプさんがどんな主張をしているのかと考えていたのです。
「自国の利益」だけを考えてたらいろいろ非効率だよねっていうのはよく分かる「理屈」です。
日本が自動車を作るのがうまく、アメリカでは穀物がたくさんとれるなら、それぞれ分担して、お互い、得意なものを交換すればいい。
アメリカと日本だけではなく、全世界で、物を交換することで、みんなが豊かになる。
それがグローバリズムの基本的な考え方なのだろうと思います。
でも、そうはうまくいかないのが世の理。
みんなが自分が他よりも得しよう、もうけようとすることで、
「なんだよ、あいつ、ちょっとずるいんじゃね?」
ってことになります。暗黙のルールは破ったら得をする。
それもある種の「パラダイムシフト」なのかもしれなくて、その繰り返しが文明を発展させてきたとも言えますが、ただルールはルールで、それを守らなくなることで大切な何かを失ったりもするんだよなぁ。
結局、今のグローバリズムの流れってのは、地球全体で見た時に、みんなが「自分だけ得しよう」としたら、資源は枯渇するは、温暖化は進行するはで、人類全体の命が縮むって話ですよね。
だから世界全体で協調しようよ、と。
トランプさんを大統領にしたアメリカ国民の主張も分かるんですけどね。
「世界全体の理想を語るより、俺を救ってくれ」
とね。そして、
「よし、分かった。日本やメキシコのことなんか知るか。強いアメリカを取り戻そうぜ」
しかしねぇ・・・
大転換が起こっていることは確かです。私達は第二次世界大戦の後からずっと、アメリカという超大国が人類全体を守っているという世界の中で生きてきました。
ところがそんなのは日本だけの幻想だったのかも。
アメリカに守ってもらってない国からしたらそりゃ日本はおめでたく見えるよな。
人類全体のことなんか誰も考えちゃいない。
みんながみんな自国の利益だけを守り、他の国のことなんて知るかということになっちゃったら。
そりゃ次の戦争も起こるでしょう。
私達は…
人類全体のことを考えたり、地球全体のことを考えるなんて「理想」に過ぎないのかもしれない。「幻想」なのかもしれない。
明日の自分のご飯もままならないのに、なぜ100年先の人類の心配なんかしなくちゃいけないかって思う人がいるのも分かります。
でも、それを忘れてしまってはだめだと思うんだけどな。
トランプさんは誰もが言えなかった本音で語ってくれるところが魅力だと言います。
でもその本音が
「俺さえよけりゃいい。他のことなんて知るか」
じゃなぁ~
大統領選出後の演説では、トランプさんも少し他の国とうまくやっていこう的なことを話していたように思います。ぜひそうして欲しい。
冒頭のたとえ話に戻ります。
このようなトラブルが起きた時どうするか。今まではアメリカがルール違反を取り締まってきたわけです。ところがその取り締まる役をアメリカが降りてしまった。
そしたらみんなDのように、もう協調なんかやめて自国のことだけを考えるようになっても不思議ではありません。
どうなってしまうのか…とても不安です。
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