「教育勅語」って、このブログをご覧の皆様はご存知でしょうか?
なんでも園児にこれを暗唱させる幼稚園があるそうで。
どんなのかと思って検索してみました。
(引用開始)
朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ德ヲ樹ツルコト深厚ナリ
我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ教育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス
爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ德器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ
是ノ如キハ獨リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン
斯ノ道ハ實ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所
之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其德ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ
(引用終わり)
意味がすっと入ってこない部分も多いですが、「朕」というのは明治天皇のことで、明治天皇が臣民に対し下されたお言葉、ということのようです。
ネットで検索すると現代語訳も出ているんですが、意識的に当時のニュアンスをぼやかしている訳もあったりして危険なんですよね・・・
何が危険かというと、これ普通に読むと、
「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」
これがこの文章のテーマだということが分かります。
何かことが起きたら「皇運ヲ扶翼スヘシ」、つまり、天皇のために仕えなさい、ということ。
まさにいわゆる先の戦争で、国土が壊滅し、日本人全員玉砕するまで戦えということになった思想の元、そのものです。
いろいろ賛否はあろうかと思いますが、私は戦後民主主義って、天皇のために一丸となって戦争に突っ走った事を反省し、「民」が「主」なんだよ、と。これからは天皇の御為、国の御為ではなく、私たちひとりひとりが主人公で、国民はみんな、自分の進む道は自分で決めていいんだよ、となったんだと思っています。
もちろんそうなったことで「自己責任」の名の下に弱者が切り捨てられたり、思いやりがなくなってきたりはあるのかもしれませんけど、それはまた別の話。
基本的な原則として、私達は一人一人、私達自身のために生きる。
それはすごく大事なことではないのかな。
それを今更、天皇のためにって。少なくとも今上天皇はそんなこと望んでないと思うんですよねぇ。
いや、分かりますよ。
「父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ德器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ」
そりゃ大事だけれども。それを何のために為すべきかという大事なところで、当時のこの教育勅語は「天皇のため」って言っちゃってる。
これをまんま園児に暗唱させるのまずいっしょ。
園児には、
「家族やお友達とはいつもなかよくしようね」
でいいんじゃないかなぁ。
なんというか・・・「教育勅語」復活ってそりゃいくらなんでもまずいでしょう、という意見に対し「いやいや親を大事にしょうとかそういう当たり前のことがなぜまずいの?」って言われたら、そりゃ論点のすり替えに他ならず。
親を大事にしたり、勉強をしっかりやり、コンプライアンス(笑)も大事にする。
それらのことはそれはそれで大事なことなので、毎日唱えた方がいいならそういうのを新しく作ればいいとは思います。「教育勅語」はおかしい。
私は個人的に、日本国憲法前文を暗唱させたほうがよっぽどましだと思うんですけども。私、これ、好きなのよね。
(引用開始)
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
(引用終わり)
いや、現アメリカ大統領にしたら
「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」
なんてちゃんちゃらおかしいのかもしれませんが、これ、めっちゃ大事でしょ。
総理大臣や防衛大臣には就任の時に朗読していただきたい。
もちろん、公正と信義と信頼で安全や生存が保持できるわけない、との主張も分からなくないですが、現実には難しくてもそれを目指す努力はしなければ。
もう一つ、憲法から引用します。
第12条
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。
Recent Comments