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2017.03.18

「空港日誌」

 今年は、鳥取砂丘に例年にない大きな水たまりができているとのこと。
 それを見に20日に、羽田から鳥取まで飛行機でいくことにしたのですが、国内を移動する飛行機に乗る時にいつも中島みゆきの「空港日誌」という歌を思い出します。

 歌詞はこちら

 薬師丸ひろ子も歌っているらしいですが、そのバージョンは聞いたことありません。

 歌の舞台となっている空港は鳥取ではなく広島空港。

 広島空港で、恋人の男性がやってくるのを待つ女性。
 でも風が強くて、飛行機は広島空港には降りないようで。

 待っても待ち人は空港にはやってきません。

 でも、そもそも…
 どうやらその男性はその便に乗っていないようです。
「今夜の乗客は9人 乳飲み子が1人 女性が2人、あとは常連客 尋ねられた名前はありません」

 かつてその女性と男性は恋仲でしたがどうも不倫だったようです。
 想像で行間を埋めるとすると、彼は東京で勤務していたけど、何らかの理由で地方にとばされてしまう。
 私はそれが広島だったんじゃないかと想像しています。
 おそらく単身赴任だったのでしょう。そこで女性と出会う。いわゆる現地妻ですな。

「あの日にあなたが博多にいたという愛のアリバイを壊してあげたい
 写真ひとつでしあわせはたじろぐ」

 今は東京に戻った彼は、たまに出張で地方へ行くこともあるのでしょう。
 博多には支社があるのかな。
「出張で博多へ行く」と嘘をついて、実は広島の彼女に会いに来ることがあったのかも。

 女性は今日も空港で彼を待ちます。
 彼にとっては報われない地方勤務の日々だったかもしれないけれど、彼女にとっては愛した人との思い出の日々。

 東京には彼の妻や子供もいるんだろうな。
 地方勤務が終わり、東京に戻れば彼は戻ってはこない。
 そんなこと百もわかりきってるけど、でも、もしかしたらこの飛行機に彼が乗ってはいないか。
 
 切ない祈りとともに女性は今日もかつて彼がやってきた飛行機に合わせて空港へ。
 でも乗務員に尋ねても彼の名前は乗客名簿にはない。

 そう「羽田へ向かう道にさえ乗っていない」。
 女性がどんなに願ってももう彼は来ない。

 分かってる。もう彼との日々が戻ってこないことは。
 でもあきらめきれない。苦しい。だから…
「冷たい声で事実を告げて」

…いやぁ、切ない歌だなぁ…
 私はなんでこの歌が好きなのかしら。

 中島みゆきの歌ですが、曲調はどちらかというと明るめ。ゆったりしたバラードです。
 飛行機で空をゆくイメージにぴったりです。

 なんというか…どんなに望んでも叶わない夢、というのはやっぱりあって。
「分かってるんだけどね」
 と言いながらも…そうねぇ、あきらめきれないというのは違うかな。もう叶わないんだけど捨てられない。
 2人が恋人だった頃の思い出、愛された時の幸せ。
 そりゃ忘れられないよね。

 またあのゲートをくぐり出てくる彼の姿が見えないかと、もしかしたら乗客名簿に彼の名前がないかと、ついつい思ってしまう。

 私自身は不倫もそもそもそんな恋愛も経験したことないのですが、もし、この歌の女性に自分がかぶるんだとしたら、
「叶わないと分かっていても捨てられない『夢』とともに明日も生きていく」
というところかな。
 何が自分の夢だったかすらもう忘れそうですが、飛行機に乗って遠くへ行く瞬間に、ふと、その『夢』に触れたような気がします。
 なんでだろうな。何か、前世の記憶かしら(笑)。

 何を望んでこの世界に生まれてきたのか、どうも私はすっかり忘れてしまったようで、きっと死ぬまで思い出すことはないのかもしれないんですけど、もしかしたらその夢は私の場合、空港にあるのかもしれません。
 初めて見る砂丘も楽しみですが、飛行機も楽しみです。

 以降は余談。
 上記のようにきれいにまとめつつ、実は中島みゆきの「空港日誌」はそういうロマンティックな歌ではないような気もしています。

 女性は、男性が博多にいると嘘をついて広島にいたときの写真を、実際に東京の彼の家へ送りつけたんでしょう。
 きっと写真は他にもあって、それは彼が広島で妻以外の女性と不倫をしていたという証拠写真となります。
 なので、女性は男性にこう伝える。
「このままフェードアウトして関係解消を狙ってるなら、そんな都合のいいことにはさせないわ。もう広島にあなたが来ないなら、この写真を家だけじゃなく、会社にも送りつけてあげる。不倫がばれたらあなた、どうなるのかしらね。また地方勤務に戻りたい? 私はそれでもいいけどね(嗤)」

 でもそんな脅しをしても男性はもう来ないんだよなぁ~
 やっぱり切ないわね。片思いって。

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