原発反対は感情論か
「原発反対派の反対の理由は感情論でしかない」
という主張をネットで見ました。いわく
「事故が起きれば『原発は危険。やめよう』となる。でもそれはまちがい。
たとえば自動車事故で多数の死者が出ていたって車をやめようとはならない。
それは車が社会にとって必要だからだ」
読んでいて、これはどちらかというとロジック(論理)の話ではないかと感じました。
〇事故が起きると誰でもその事故の原因となるものは危険なのでやめるべきと考える
〇しかし車で事故は起こっている
〇なのに車をやめようと思わないのは社会にとって必要だからだ。
〇だから原発もやめるべきではない
ある事象に対して、
「いや、それだったら他のこういう例はあるだろ。こっちがOKなのになぜこっちはだめなの? ダメなわけないだろ」
という意見はしばしば出てきます。
たとえば、私も以前ツイッターで
〇A国が核を持った。だから日本も自衛隊を軍隊と憲法で明確にし、自分の国は自分で守れるようにならなくては。
という主張に対し、
『銃を使った犯罪があったとしても、国民はみな銃を所持して自分の身は自分で守るべき」とはならないのでは』
という意見を書いたら、
「国民の銃の所持を認めていない国でも軍隊を持っているところはあるじゃないか」
という反論をもらったことがありましたっけ。
ふむ。
論理学としては、各論で結論を導こうとしてもダメってことなんだろうな。
としたら、ここは帰納法でいきますか。
帰納法とは、複数の事象をもとに1つの結論を導き出す手法です。
たとえば最初の事故の例。事故を起こすのは原発と車だけでなく、
〇飛行機
〇電車
〇船
〇自転車
なども死亡事故はあります。いずれの場合も、事故があったとしても、なるべく事故を出さないように安全対策をとることで、安全に利用することが妥当であるとされています。事故があったって、そうした交通手段を放棄しようとはならない。
うん、こう書くと確かにそうなんだよなぁ。
帰納法で複数の事象を見ていくと、事故=やめる、というのではなく、事故があったとしても、そうした事故を二度と出さないように気を付けることで、引き続き利用していくのが普遍的原則なのかもしれません。
ただ論理的にそれが正しくてもやっぱりひっかかるんですよね…原発に反対する理由は「事故」のリスクだけではないからなぁ。
車や飛行機と原発には根本的に異なる点があります。
ある意味、反対派の主張はほぼこれに尽きる。
それは「放射性廃棄物」の捨て場所がないということです。これは事実で、原発賛成派も当然分かっている話です。
捨て場所がないのに、原子力発電を続け、「放射性廃棄物」を出し続けていいのか。
〇放射性廃棄物を捨てるところがない
〇わかっていて原子力発電を続ける
〇今必要なエネルギーのために、未来へ大きな負債を残すことになる。
これを賛成派がどう考えるかというと
〇海洋投棄
〇地中に埋める
〇宇宙に捨てる
そのどれかなのですが、地中に埋めたとして、いずれそこはいっぱいになりますよね。
放射性廃棄物が無害になるまでには10万年かかると言われており、今必要なエネルギーのために10万年の負債を残す。これはどう考えても、メリットとデメリットのバランスがおかしいような。
〇10万年も保管する必要がある廃棄物はごく一部
そういう説もありますし、
〇10万年の間にいい処理法が見つかるはずだ
という主張がありますが、未来に託すのはちょっと無責任だよなぁ
10万年・・・途方もない未来です。10万年保管できる「地中」は今の地球にどれくらいあるのでしょうか。「海洋」も同様です。
少なくとも日本にはないんだよなぁ。10万年単位で見ると安全な地層の上に日本はそもそもないので。
だとしたら、宇宙に捨てる方がまだ現実的か、なんて考えてちょっと調べてみたところ…
〇軌道エレベータで太陽に捨てる、という話がありましたが、それは原理的に無理(太陽に命中させるのが困難)。
〇太陽に命中させるのが無理なら宇宙空間に放り出すという案もありますが、地球の重力、太陽の重力の影響下の外へ廃棄物を射出するのがコスト、エネルギーともにかかりすぎ現実的ではない。重力のくびきを逃れられないと、廃棄物は地球の周りもしくは太陽の周りをまわり続け、地球に落下する可能性もある。
うーむ。これもだめだわ。
ただ、もし「軌道エレベータ」が実現化するような未来が来るとしたら放射性廃棄物を捨てるためでなくこちらの可能性があるようです。
〇宇宙太陽光発電
宇宙で太陽光発電すれば、天候には左右されないし、効率もよい。地上に電気を送るために「軌道エレベータ」を利用するのですが、調べてみると、送電は軌道エレベータに限らず、マイクロ波送電、ビーム送電という方法もあるようです。
もし実現化すれば、そもそも原子力発電しなくてよくなります。
としたら地球上で原子力発電が必要な期間というのは「過渡期」なのかもしれません。
基本、日本には先に書いたように、原子力発電による廃棄物を安全に保管できる場所はないのですが永遠に増え続けるのではなく、「宇宙太陽光発電」実現化までの、たとえば100年だとすると、100年分だけの放射性廃棄物をどうにか保管すればいい。
まあ100年限定なら、化石燃料でつなぐというのもありか。
袋小路だった問題に多少、光が見えてきました。
これからの時代、難しい課題の解決策を考えるのは、人類ではなく、AIという強い味方もいます。
あらゆる条件やデータをぶち込んで、課題を整理し、実現には何が必要か。
ヒトの脳は物理限界がありますが、AIにはそれはないし、大量のデータを全て記憶できる。
AIを適切に使って、エネルギー問題を検討していけば もしかしたら、次の100年で解決策が見つけられるかも・・・
「原発反対は感情論か」からずいぶん遠くまできてしまいました。
「宇宙太陽光発電」が実現化するといいな。
なお、原子力発電の廃棄物問題については、こんな記事を読みました。
とても分かりやすかったので、このブログでもご紹介しておきます。
この記事の中で引用している「放射性廃棄物が無害化するには10万年」というのがそもそも正しいのか、ということについても書かれています。
私もまた考え続けよう 、とこの記事を読んで改めて思いました。
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猛暑でも節電要請なし 太陽光発電が支える列島の夏
環境エネ・素材
2018/8/11 0:00
日本経済新聞 電子版
記録的な猛暑が続く日本列島。エアコン使用が増えて電力需要は伸びているにもかかわらず、
政府が国民に節電を要請するような事態にはなっていない。2011年の東日本大震災以降、
稼働する原子力発電所は大きく数を減らしている。
なぜ電力は足りているのか。その謎を解く鍵の一つが、ここ数年で急速に普及した太陽光発電だ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34051080Q8A810C1SHA000/?n_cid=SPTMG002
Posted by: | 2018.08.11 11:40