「十二人の死にたい子どもたち」(ネタバレあり)
今回の記事は、沖方丁原作の小説、およびその映画化作品の感想です。
ネタバレありなので、ラストどうなるかを知りたくない方は読まないでくださいね。
(ここから感想)
この物語は「どうして死んではいけないのか」の答えです。
すごく分かりやすくてびっくりしました。
小説はちょっと冗長で、読んでいて誰が誰だか分からなくなってしまうのですが、小説の後、映画を見たら、大変感動しました。
映画はとてもテンポよく分かりやすく展開します。映像でそれぞれの登場人物の顔を見ながらストーリーを追う方が分かりやすい。
死ぬためにネットを通して集まった十二人の少年少女達にはそれぞれに死にたい理由がありました。
☆病気で苦しいから死ぬ(シンジロウ)
☆いじめられてつらいから死ぬ(ケンイチ)
☆親から否定されて死ぬ(セイゴ)
☆不治の病にかかってしまったから死ぬ(マイ)
☆自分の生きたいように生きられないから死ぬ(リョウコ)
☆好きだった人が死んでしまったから死ぬ(ミツエ)
☆生きていること、生まれたことが無価値だから死ぬ(アンリ)
☆人を殺してしまったから自分も死ぬ(ノブオ)
☆母親に薬漬けにされて苦しいから死ぬ(タカヒロ)
☆兄を植物状態にしてしまったから兄と一緒に死ぬ(ユキ)
☆父親に自分を認めて欲しいから死ぬ(メイコ)
☆死に憑りつかれてしまったから死ぬ(サトシ)
もし自分がそれぞれの立場の人間だったら、死にたいと考えてもおかしくない、と私は本を読んで、映画を見て、思いました。
でもね。
十二人の少年少女達は、それぞれに「死のうとしている他人」の理由を聞き、話し合っている内に気付いてしまうのです。
どんなに苦しくても、つらくても、逃れられないと思っていても、「生きる」ということは「可能性」に他ならず。
自分の力で、あるいは誰かの助けを借りることで変えることができるかもしれない、と。
死は何の解決にもならない、と。
たとえば「ユキ」です。自分が引き起こしてしまった事故で植物状態になってしまった大好きだった兄を見続けることが辛く、それが自分のせいだとも誰にも言えず、死んでしまおうとしていました。
でも、ここに集まったみんなは、その事故はユキのせいじゃないと言いました。全くの他人に過ぎない、自分が一緒に死ぬつもりだった兄を助けようとしてくれました。
その事実がユキの気持ちを変えるんです。
そしてシンジロウ。
ずっと病気で苦しみ続け、いつか衰弱して自分で何もできなくなってしまう。その前に自分の命を自分の意志で終わりにしたいと思っていた彼も、自分がマイと変わらないことに気付いてしまいます。
いつか死ぬまでは生き続けよう。この集いに集まった仲間と話す内に、彼の気持ちも変わりました。
一人一人がみんな、他人の死にたい理由を知るにつけ…そして「生まれてきたことが間違いだった」という最後のアンリの叫びを聞いて、自分がそうは考えていないことに気付いてしまう。
自分はどう生きたかったのか。それはもうできないのか。ここで死んでしまっていいのか。
・・・
・・・
いやぁ、この作品、心に刺さるなぁ。
映画の評価がネットで見るとそんなに高くないのがものすごく残念なんですが、この映画は巷によくある「殺人ゲーム」の話なんかじゃないんですよ。
ただ、結局それは、この本を読み、または映画を見て、最後に自分で「そうだったのか」と理解することで悟るしかなくて。まずは、読んで、見てもらわねば、この感動は理解してもらえない。
私も、正直、小説だけでは、あまり面白いとも思わなかったし、「ふーん」くらいの感想だったのですが、間を置かずに映画を見たらはまってしまいました。
見てよかったです。
私のいつか死ぬまで、生きることの可能性にかけて、がんばって生きていこう。
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