「悪い本」
「怪談えほん」という絵本のシリーズがあって、すごく好きではまっています。
文は、世に知られた有名な小説家や俳優などいろいろな人が書いていて、それに、時にぴったりな、時に文章以上に怖さを引き立てる、時にまったく文章と違うもう一つの世界を描いたような絵がついて「絵本」になっています。
図書館で借りて読んでいるのですが、読んで大好きで手元に置いておきたくなって買ってしまった本もあります。
その話はいずれするとして、この記事では宮部みゆきさん作の「悪い本」を引用させていただきたいと思います。絵本なので、文章はその半分にしかすぎません。もしこの文章を読んで読みたくなったら皆さんもぜひ絵本を手に取って見てください。
(引用開始)
「悪い本」
はじめまして
わたしは 悪い本です
この よのなかの
悪いことを
この よのなかで
いちばんよく しっています
あなたは いま
悪いことが かいていある本なんか
ほしくないと おもったでしょう
でも、それはまちがいです
いつか あなたは わたしが ほしくなる
わたしと なかよくなりたくなる
いつか どこかで
あなたは だれかを きらいになります
だれがが いなくなればいいと おもいます
あなたは なにかを きらいになります
なにかが なくなればいいと おもいます
かならず
かならず
そのとき あなたは もういちど
わたしの ページを めくるでしょう
そしたら わたしは
あなたに おしえてあげる
この よのなかで いちばん 悪いことを
いちばん 悪いことを おぼえたら
あなたは いちばん 悪くなる
いちばん 悪くなったなら
なんでも できるようになる
きらいな だれかを けすことも
きらいな なにかを こわすことも
じょうずに
じょうずに
いつか あなたは わたしが ほしくなる
そのとき また あいましょう
わたしは まっていてあげる
ずうっと
ずうっと
あなたが わたしを わすれても
わたしは あなたを わすれない
(引用終わり)
・・・いかがでしょうか。
私はこの本に出会ってしまって、この先の人生で、何度もこの本のフレーズを思い返すような気がしました。
この世の中で何が一番怖いかって、それは自分の中で、普段は隠してある「悪意」なのだろうと私は思います。
「わたしは あなたを わすれない」
私自身が私の中の悪意を忘れても、ずっと覚えている存在が世界にあるような。そう、私は本当は優しくも思いやり深くもなくて…
これ以上はやめておきましょう。ぜひ、皆様も「悪い本」読んでみてください。
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