肉じゃがチャレンジ
10月から11月、肌寒さを感じると思い出すことがあります。
今、私は恋人と一緒に暮らしています。一昨年の9月から付き合っているので、付き合って2年2ヶ月経ちます。
去年もそうだったんですが、季節が巡ると、最初の1年目のことを思い出して何だか甘酸っぱい気持ちになります。
最初のデートが7月だったので、暑くなると、
「汗かきながら二人で町を歩いたな」
「あのときは行きたいと思っていた店がいっぱいで入れなかったな」
なんて思うし、次第に日が短くなってくると
「夕暮れの駅前で彼と最初に待ち合わせしたの、ここだったな」
とか思って、なんとなく感傷的になったりします。
1年目は… 私はずっと恋人っていなくってもうこのまま一人で一生、生きていくんだろうと思っていたので、彼と出会って付き合うことになって、自分でも信じられないような気持ちでした。
7月に初デートして、9月に「付き合いましょう」ということになり10月…11月。
9月に付き合いを始めた時はお互いに知らないことも多く、私自身、かなりネコ被っていましたので、付き合う内にお互いを知って行かなくちゃと思っていたのですが、付き合って2ヶ月くらいになってもお互いの距離が縮まらないことに、当時、かなり焦っていました。
もういい年なので結婚に焦っていたわけではありません。
恋人ができたことがない…つまりは他人とそこまで近い関係になったことが私はなかったので、
「このまま自分の外面の、いいところだけ見せたまま、付き合いが続く」
ことに焦っていたのです。
誰でもそうかもしれません。 自分のダメなところ…だらしなかったり、劣等感を抱いていたりするところをなるべく隠して他人と接していますよね。
でもその相手が、この先もずっと共に人生を生きるかもしれない相手ならそれではダメだと私は思っていました。
当時の自分の心境を思い返すと、彼の方から私に「付き合おう」と言ってくれたんですけど、
(私はそんなに素敵な人間じゃないし、私と付き合って彼に何かメリットがあるわけじゃない。 仮に結婚とかしても、家事一切を私がやるようないい奥さんにはなれそうにないし… それでもホントに私でいいんだろうか???)
そういう思いでいっぱいでした。
彼が私に何を期待していて、私はそれに応えられるのかどうか、とても不安でした。 私は元々、自分に全然自信がありません。美人でもない。 それなのにこのまま彼と付き合っていいんだろうか? だましていることにならないか? そういう「焦り」です。
彼は普段、とても無口で、自分の感情をあまり表に出しません。 出会ったばかりで私自身も彼のことをあまり知らないので、心の中を推し量ることもできない。
ずっともやもやしていたのですが、ある日、気づきました。 相手を知りたいなら、自分から自己開示しなければ、と。
そして10月の終わりに、意を決して彼を初めて自宅に招待しました。 それまで自分の住まいは明かしていなかったんですけどね。
いやぁ大変でしたよ、部屋中掃除するの(笑) 念のためと、風呂の排水溝まで掃除し、布団のシーツも替えて…思い出すと笑ってしまいます。 がんばったなぁ、私。
というのが10月の終わりから11月の初めにかけての私の、強烈な彼との思い出で、今年も同じ時期になり、当時を思い出します。
家に来る彼のために「肉じゃが」を作りました。 なのでこのときの一連の出来事を「肉じゃがチャレンジ」と私は自分の中で呼んでいます。
結果として「肉じゃがチャレンジ」は成功し、今も私は彼と一緒に暮らしています。 あれほど他人と近づけず、一人ぼっちだった私がこんなふうに一緒に暮らせるなんて、ホント、今でも毎日が奇跡。
この先、来年も再来年も…年をとっておばあさんになっても、キンモクセイの香りがする頃、日がすっかり短くなって肌寒さを感じる頃になったら、私はこのときのことを思い出すんだろうな。
そのときにもどうか彼の隣にいられますように。
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