2017.05.09

poem(117)

      素直

あなたに「君は素直」とほめられた

「君は頑固」
「君は融通がきかない」
「君は人の言うことをきかない」
そう言われるよりはもちろんほめ言葉なんだけど

素直じゃない私は嫌いですか
あなたの言うとおりにしない私は嫌いですか

あなたの命令に従っていれば満足ですか
いつもあなたの思いどおりにしないといけませんか
それって私である必要はありますか

「素直」と言われて喜べない私は素直じゃない

いつもあなたの望むとおりの私ではいられない
でもたまにはあなたの望むとおりの私かもしれない
あなたにとって都合のいい私も都合の悪い私も
どちらも私

友達なら
都合のいいときだけ
都合のいいように
都合のいい私とだけ付き合えばいいよ
でもそうじゃないなら

お願いです
あなたにそう言われると悲しくなる
どうか「素直」ってほめないで

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2017.03.18

poem(116)

「3月」

長く生きるとその分だけ
思い出は増える

病床の母に枕元で歌を歌ったのが3月
卒業で初めて花束をもらったのが3月
親切だった同僚と異動で別れた3月
3月は「さようなら」の月だ

誰もが何かに区切りを付け
ここから旅立ってゆく

それなら今年は私も
あれもこれもにさようならしてしまおうか
全てを終わりにしてしまいたいと
今まで何度も考えたことはあるけれど

でもその絶望から
私達は必ず再生する

春の風に肩を押され
古い思い出に別れを告げ
再び歩き出す
3月

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2017.02.23

poem(115)

『2月』

1年の12の月の中で
2月は一番短い
28日か年によっては29日
それだけしかないから実際に短いんだけど
それ以上に心理的にも
なぜだかすぐ終わってしまう

不思議に長く感じる1月が終わると
あっという間に過ぎ去る2月

年度末まで
三学期が終わって次の学年に進級するまで
気がつくとあとひと月しかない

人によっては
卒業があり
人事異動や転勤があり
退職がある
慣れ親しんだ生活との
仲の良かった友人との
別れの3月が近づく

もっとやっておきたかったことはなかったか
もっと親しくなりたかったんじゃないのか
このまま別れてしまっていいのか

おかしいね
永遠の別れは誰にでも
いつやってくるか分からないのに
なぜ私達は明日も
同じような毎日を過ごすはずと
根拠もなく信じているのか

その油断を咎めるかのように
この2月も
焦る私を置き去りに
足早に過ぎてゆく

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2017.01.26

poem(114)

ツイッターでタレントの千秋さんが言っていた

>ほらやっぱりそうだ
>1月だけ進むのが超遅い
>お正月から随分経った気がするのにまだ16日、月の半分しか進んでない
>でも2月になった途端に超速くなるの
>知ってんの
>2月になったと思ったらあっという間に11月
>で、12月だけ少しゆっくり進んで
>またそれの繰り返し
>一年間ってそんな感じ!

「1月だけ進むのが遅い」
うん、そうかもね

新年になってずいぶんいろんなことがあったけど まだ1月

いっそのこと ずっとこのまま1月だったらいいのに

「きっと今年はいいことがある」
そんな漠然とした期待がある1月
まだ何も結論を出さなくてもいい
まだ何もやらなくていい
モラトリアムな1月

外は今年は特に寒いけれど
家に帰ればお鍋でもしてあったかくなる
バスクリンを入れた家風呂も気持ちいい

大それた目標や
年をとることの不安や
そうして結局何もできなかったことへの焦りや
そんなものは関係ない1月

やりたいことはたくさんあっても
まだ動かなくていい1月

ずっと1月だったらいいのに

このまま永遠に年をとらないなら
私たちはこんなに生き急ぐことなく
自分のことだけでなくて 世界全体のことを考えたり
人にやさしくできたりするんじゃないか

もう何もいらないんだ
ただこうして幸せに生きていられるだけでいいんだ

そんなささやかな望みを打ち砕くように
あとたったの数日で
気が付くと今年もすぐに終わってしまうのか

永遠にここにいたい
この1月に


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2016.02.29

poem(113)

「うちにおいでよ」

転勤で新しい住まいに引っ越したから
きれいな内に遊びにおいでよ

大好きな紅茶を淹れて
美味しいケーキでも食べて
一緒にのんびり過ごさない?

外でお茶するよりも
家の方がいろいろ安い
疲れたら寝っ転がったりもできるしね
何なら泊まっていってもいいんだし

そんなふうに誰かが同じ空間にいることを
愛することができるなら
結婚って思うより簡単なのかもしれないね

私の家においでよ
ずっときみを待ってる

どこにいても
きみを待ってるよ

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2016.02.23

谷川俊太郎「かなしみ」

 子供の頃、授業で習った詩って今でも覚えていて何かのときにふっと思い出すことがあります。こういうときにインターネットって便利ですね。断片的にしか思い出せなくても、ちゃんと検索すれば探し当てられる。
 この詩、懐かしいなぁ。「20億光年の孤独」という有名な谷川俊太郎の詩がありますが、同じ詩集に入っている詩なんだそうです。

     かなしみ  谷川俊太郎

あの青い空の波の音が聞こえるあたりに
何かとんでもないおとし物を
僕はしてきてしまつたらしい

透明な過去の駅で
遺失物係の前に立つたら
僕は余計に悲しくなつてしまつた


好きだったな、この詩。
この詩を学んだ子供の頃は、なんだか訳も分からずに悲しくなることが多かった気がします。

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2015.12.24

poem(112)

「終わりの日」

今年の年末はいつもの冬より暖かい

昨夜書いた年賀状を手に
朝の日差しを浴びていつもの通勤路を歩いていると
懐かしい人に会いに行きたくなる
あの頃はそばにいた
今はいない誰かに

明日や明後日や来週や来月
先のことばかり心配で
今の内にやっておかなくてはいけないと
追い立てられるように生きている

気がつけば 今年もあと数日
何を忘れているかも忘れたままに
いつもと同じ終わりの日がやってくる

「終わりの日」の話をしたら
きっと君は笑うだろう
子供じゃないのだからと
それでも

忘れてしまった人
忘れてしまった日々
すでに思い出すらないけれど
終わりの日々に
古いはがきを紐解いて辿ったら

新しい朝は
君に会いに行こう

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2015.08.27

poem(111)

 奇跡の一本松=The miracle solitary pine tree

津波で町がまるごと一つ流された
岩手県の陸前高田と呼ばれる場所に
私は今も立っている

どこまでも続いていたかのような
あの美しい白い砂浜は
4年前の3月に姿を消した
海からの風を受けてそよいでいた
仲間達もいなくなった

私もまた潮を被って枯れ果て
ここを去るはずだったけれど

人々が私をここに残した

あの日 大きな津波で崩れた建物も
私の周りに残されている

町があった場所は 今
土が盛られて再生の時を待っている

ここに立っていれば
またあの頃に戻れるのだろうか
白い砂浜
たくさんの仲間達
そして多くの人々

もう悲しくはない
ひとりぼっちが少しさみしいだけ

もしもこの声が届いたら
あなたにここに来て欲しい
あなたに見に来て欲しい
生まれ変わる前の私を
生まれ変わる前のこの町を
どうか
2015_5

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2015.03.27

poem(110)

   「見送り」

3月 たくさんの人が職場を去っていく
定年退職の人
異動の人
出向する人
出向で来ていて元の職場に戻る人

私はもうしばらくここに残る
桜の中 みなを送る立場だ

人の出会いは一期一会
もう二度と会わない人もいるだろう

去る側よりも
見送る側
残される側
置いていかれる側に
私はなることが多いのだけど

きっとそれは私だけじゃないんだろう
生きている限りずっと人は
誰もみな見送る側にいるのだから

去っていく人達に
敬意と
愛情と
いたわりと
エールと
そしてありったけの感謝をこめて

「ありがとう
 私もここでがんばるから
 あなたもがんばって」

かける言葉はこれだけ

分っていたはずなのに
どうしてだろう この春は
大好きだった人達と会えなくなるのが
いつもよりちょっとだけ余計に 
さみしい

優しくしてもらったこと
頼ってもらったこと
悩みを打ち明けてくれたこと
今になってそれがとても懐かしい

いつか思い出になり
忙しさに紛れて忘れてしまうまで
一時 このさみしさとともに
涙がこぼれないように
桜を見上げようか

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2015.03.14

3.11

(2012年10月19日に掲載した詩の再掲です)

「3.11」

いつも見ていたあの美しい桜は
駅前再開発の時にそこから消えた
別の場所に移植されたと聞いた
どこか別の場所で美しく咲いているだろうか

子供の頃に生まれた家から引っ越したことがある
いつも過ごしたあの家に
もう二度と帰れないことが不思議だった

普通に暮らしていても
時が経てば何もかもが変わっていく
目の前で変わっていくものを
もう何度見送ったことだろう

いつしか知った
大切なものは心の中にあるのだと
そこでは何もかも変わらないのだと

あの美しいふるさとも永遠にそこにある

どんなに世界が変わっても
私はここにいるのだから

喪ったものを悼むのは
ひと月に一度だけでいい
繰り返す11日 14時46分
その時だけ

どんなに世界が変わっても
私たちはここにいる

大切なものを心に留めながら
声を出さずに祈りながら

明日のために
今日を生きよう
・・・一緒に

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