2018.04.07

poem(120)

「どうかよろしく」

一人で作って一人で食べるごはんもおいしいけど
外食でとびきりおいしいものを食べるなら
きみと二人がいい

行く先は自由きままに決めて
夜はビジネスホテルのシングルでのんびりする
一人旅もいいけれど
きれいな桜や雄大な山々や
きらめく湖畔のホテルでゆっくり過ごすなら
きみと二人がいい

他人といると緊張して
自分が相手にどう見られているかばかり気にしているけど
きみといたら一緒に笑えたし
きみとの旅はリラックスできた
きみが笑ってくれると私も楽しかった

自分よりも大事な誰か
自分が美味しいものを食べるよりも
きみがおいしいと言ってくれる方がうれしい

そう思えることがまさか私にもあるなんてね
一生に一度でもそう思えたことがあってよかった
一生に一度でもそう思わせてくれてありがとう

感謝の言葉はもうきみには届かないけど

神様 
私にそんな喜びをくれたあの人を
どうかよろしく

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2018.02.28

poem(119)

「再生」

やはり周囲がざわめきだすのは3月だ

新しい年が1月に静かに始まり
寒さに凍える2月が過ぎてゆき

何も動いていないように見えて
何も変わらないように見えて
不意に大きく動き出す

終わるものもあるけれど
全てが終わってしまうわけではない
そこから新しく始まる

つまり3月は「再生」の季節

私もまた
今年も古い夢に別れを告げて
春の訪れに始まりの歌を歌おう

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2018.02.16

poem(118)

「天命」

もうずいぶんと前の若い頃に私
「いいお嫁さんになりそう」
と言われたことがあります

きちんとした職場に勤めていて
誰かに紹介するにはいいお嬢さんだったんでしょう
美人ではないですけど

ただ当時
私はそう評されることが嫌でした
人間、いつ病気になるか分からない
それにけっこうずぼらで怠け者
掃除も洗濯も毎日はしません
いいお嬢さんに見えるのはそう体面を繕っているから
それは本当の私ではない

結婚して一生一緒に生きていくのに
本当の私でない私を気に入ってもらっても
じゃあ私が病気になったらどうするの
離婚するの?

私は子供の頃から親や学校や友達や
他人に嫌われることが怖くて
外側の自分を取り繕って生きてきました
それは楽なことではなかった

取り繕う必要がないところにいたい
誰にも見られたくない
一人にしてほしい
それが私の本当の望み

結婚するなら本当の私を愛してほしい
でも嫌われるのが怖いから本当の私を見せられない

それじゃ結婚できるわけがないし
むしろ結婚は自分の望みとは反対
そして自分が不美人なのは知ってたから
自分の食い扶持は自分で稼がなきゃと就職し
あれから幾年月
一人で無事幸せに今を生きています

ただ 外側の私と本当の私
どちらも私なんだと気づいたある日から
その両者はだいぶ近づいてきました
今でも洗濯や掃除は毎日してないけど
ずぼらで怠けることは好きだけど
本当の私も自分で思うよりもいろんなことができるのが分かったから
「本当の私は何もできないろくでなしだ」
と思わされてきたのはどうやら何かの「呪い」だったらしい

呪いを乗り越えるのにずいぶん時間がかかっちゃったな
今や何でも自分でできるようになって
幸せな生活を送っている私ですが

少子化問題や婚活に悩む若い女性の相談などを目にすると心が騒ぎます
今の私だったら
「外側の私」や「本当の私」に惑わされることなく誰かを愛せるかしら
信頼できる誰かの前でありのままの自分でいることができるかしら
そしてそうなるのがもっと早かったなら
私も子供を産んでお母さんになることができたのかな

それは決して後悔ではなくて
人生をやり直したとしても私はこうして生きるしかなかったからもういいんですけど
ではこれからの人生で
私にはまだできることがあるだろうか、と

不惑の年を迎えた頃に
「まだまだこのままじゃ終わらないよ」
と思ったっけ
その思いは今もあります
まだまだ人生は続く

そしたらそろそろ
見つけにいきましょうか
天命をね

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2017.05.09

poem(117)

      素直

あなたに「君は素直」とほめられた

「君は頑固」
「君は融通がきかない」
「君は人の言うことをきかない」
そう言われるよりはもちろんほめ言葉なんだけど

素直じゃない私は嫌いですか
あなたの言うとおりにしない私は嫌いですか

あなたの命令に従っていれば満足ですか
いつもあなたの思いどおりにしないといけませんか
それって私である必要はありますか

「素直」と言われて喜べない私は素直じゃない

いつもあなたの望むとおりの私ではいられない
でもたまにはあなたの望むとおりの私かもしれない
あなたにとって都合のいい私も都合の悪い私も
どちらも私

友達なら
都合のいいときだけ
都合のいいように
都合のいい私とだけ付き合えばいいよ
でもそうじゃないなら

お願いです
あなたにそう言われると悲しくなる
どうか「素直」ってほめないで

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2017.03.18

poem(116)

「3月」

長く生きるとその分だけ
思い出は増える

病床の母に枕元で歌を歌ったのが3月
卒業で初めて花束をもらったのが3月
親切だった同僚と異動で別れた3月
3月は「さようなら」の月だ

誰もが何かに区切りを付け
ここから旅立ってゆく

それなら今年は私も
あれもこれもにさようならしてしまおうか
全てを終わりにしてしまいたいと
今まで何度も考えたことはあるけれど

でもその絶望から
私達は必ず再生する

春の風に肩を押され
古い思い出に別れを告げ
再び歩き出す
3月

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2017.02.23

poem(115)

『2月』

1年の12の月の中で
2月は一番短い
28日か年によっては29日
それだけしかないから実際に短いんだけど
それ以上に心理的にも
なぜだかすぐ終わってしまう

不思議に長く感じる1月が終わると
あっという間に過ぎ去る2月

年度末まで
三学期が終わって次の学年に進級するまで
気がつくとあとひと月しかない

人によっては
卒業があり
人事異動や転勤があり
退職がある
慣れ親しんだ生活との
仲の良かった友人との
別れの3月が近づく

もっとやっておきたかったことはなかったか
もっと親しくなりたかったんじゃないのか
このまま別れてしまっていいのか

おかしいね
永遠の別れは誰にでも
いつやってくるか分からないのに
なぜ私達は明日も
同じような毎日を過ごすはずと
根拠もなく信じているのか

その油断を咎めるかのように
この2月も
焦る私を置き去りに
足早に過ぎてゆく

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2017.01.26

poem(114)

ツイッターでタレントの千秋さんが言っていた

>ほらやっぱりそうだ
>1月だけ進むのが超遅い
>お正月から随分経った気がするのにまだ16日、月の半分しか進んでない
>でも2月になった途端に超速くなるの
>知ってんの
>2月になったと思ったらあっという間に11月
>で、12月だけ少しゆっくり進んで
>またそれの繰り返し
>一年間ってそんな感じ!

「1月だけ進むのが遅い」
うん、そうかもね

新年になってずいぶんいろんなことがあったけど まだ1月

いっそのこと ずっとこのまま1月だったらいいのに

「きっと今年はいいことがある」
そんな漠然とした期待がある1月
まだ何も結論を出さなくてもいい
まだ何もやらなくていい
モラトリアムな1月

外は今年は特に寒いけれど
家に帰ればお鍋でもしてあったかくなる
バスクリンを入れた家風呂も気持ちいい

大それた目標や
年をとることの不安や
そうして結局何もできなかったことへの焦りや
そんなものは関係ない1月

やりたいことはたくさんあっても
まだ動かなくていい1月

ずっと1月だったらいいのに

このまま永遠に年をとらないなら
私たちはこんなに生き急ぐことなく
自分のことだけでなくて 世界全体のことを考えたり
人にやさしくできたりするんじゃないか

もう何もいらないんだ
ただこうして幸せに生きていられるだけでいいんだ

そんなささやかな望みを打ち砕くように
あとたったの数日で
気が付くと今年もすぐに終わってしまうのか

永遠にここにいたい
この1月に


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2016.02.29

poem(113)

「うちにおいでよ」

転勤で新しい住まいに引っ越したから
きれいな内に遊びにおいでよ

大好きな紅茶を淹れて
美味しいケーキでも食べて
一緒にのんびり過ごさない?

外でお茶するよりも
家の方がいろいろ安い
疲れたら寝っ転がったりもできるしね
何なら泊まっていってもいいんだし

そんなふうに誰かが同じ空間にいることを
愛することができるなら
結婚って思うより簡単なのかもしれないね

私の家においでよ
ずっときみを待ってる

どこにいても
きみを待ってるよ

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2016.02.23

谷川俊太郎「かなしみ」

 子供の頃、授業で習った詩って今でも覚えていて何かのときにふっと思い出すことがあります。こういうときにインターネットって便利ですね。断片的にしか思い出せなくても、ちゃんと検索すれば探し当てられる。
 この詩、懐かしいなぁ。「20億光年の孤独」という有名な谷川俊太郎の詩がありますが、同じ詩集に入っている詩なんだそうです。

     かなしみ  谷川俊太郎

あの青い空の波の音が聞こえるあたりに
何かとんでもないおとし物を
僕はしてきてしまつたらしい

透明な過去の駅で
遺失物係の前に立つたら
僕は余計に悲しくなつてしまつた


好きだったな、この詩。
この詩を学んだ子供の頃は、なんだか訳も分からずに悲しくなることが多かった気がします。

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2015.12.24

poem(112)

「終わりの日」

今年の年末はいつもの冬より暖かい

昨夜書いた年賀状を手に
朝の日差しを浴びていつもの通勤路を歩いていると
懐かしい人に会いに行きたくなる
あの頃はそばにいた
今はいない誰かに

明日や明後日や来週や来月
先のことばかり心配で
今の内にやっておかなくてはいけないと
追い立てられるように生きている

気がつけば 今年もあと数日
何を忘れているかも忘れたままに
いつもと同じ終わりの日がやってくる

「終わりの日」の話をしたら
きっと君は笑うだろう
子供じゃないのだからと
それでも

忘れてしまった人
忘れてしまった日々
すでに思い出すらないけれど
終わりの日々に
古いはがきを紐解いて辿ったら

新しい朝は
君に会いに行こう

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